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【メディア掲載】早稲田大学トランスナショナルHRM研究所会報に当社代表が寄稿いたしました

早稲田大学トランスナショナルHRM研究所発行の会報第11号に当代表取締役・稲垣隆司が寄稿いたしましたので、お知らせいたします。

「Cultural Intelligenceを高め、国や世代間・性別ギャップを力に変える」というテーマで、異文化に適応する能力の重要性について言及いたしました。詳しくは本文をご覧ください。

Cultural Intelligenceを高め、国や世代間・性差ギャップを力に変える

「あなたは部下の遅刻を1カ月で何回許せますか?」

当社の研究チームは、「リターン・ポテンシャル・モデル」という暗黙知を量的に測定する分析手法を用い、韓国人・中国人・インドネシア人・インド人・アメリカ人にこのような「勤怠」に対する考え方の差異を調査している。これらの国の中で一番厳しいのは韓国で、3.1回の遅刻が許容範囲。一番緩いのはインドで4.2回だった。平たく言うと、韓国では3回までしか遅刻を許されないが、インドでは4回までは許されるということだ。他国はその間に位置した。

さて日本はどうか。許される限界は1.5回で、他国と比較して許容範囲は半分以下。さらに興味深いのは、日本を除く5カ国は、遅刻0回を「高く評価」しているのに対して、日本では回答者の1/3が、遅刻回数0回を「普通」と回答しており、高い評価には値しない。「遅刻をしないのが当たり前」という文化なのである。
当研究チームでは、「勤怠」に対する暗黙知ギャップだけでなく「時間」「キャリア」「自己実現」「ワークライフバランス」の項目で様々な国家間ギャップを調査しているが、「日本人の価値観の特異性」が浮かび上がる結果となっている。
また、日本で働く外国籍社員の方々にも多数インタビューをしているのだが、多くの人が最初の1年目で大きなカルチャーショックを受けていることがわかった。私がインタビューをした人たちは、そのショックから回復されている方が多かったが、カルチャーショックから立ち直れず1年以内に帰国する人もいるという。
この特異な価値観を持つ日本で、外国籍社員に求められる能力が「Cultural Intelligence・異文化適応力」だ。この能力が高ければ、最初はカルチャーショックを受けても次第に適応してなじみ、日本で活躍することができる。外国籍社員を採用される場合は、Cultural Intelligenceを見極めていただきたい。当社は大学教授らと研究チームを作り、それらを測定する検査やトレーニングを開発している。(以下ご参照:https://hr-cqi.net/

しかし、Cultural Intelligenceは外国籍社員だけに求めることでは決してない。我々日本人にとっても重要でトレーニングが必要な能力だ。トレーニング手法のおすすめの1つは「アウェーを味わうこと」である。私は2020年2月に、インドネシアで日系企業に勤めるインドネシア人の方々に30社・40名ほど集まっていただき、Cultural Intelligenceのテーマで講演をする機会があった。日本人は私だけ。最後の30分間は質疑応答の時間を設けたが、「なぜ日本人は●●のような考え方をするのか!?」という質問が殺到し、予定終了時刻を大幅に延長しても誰も帰らない白熱した時間となった。
冒頭の遅刻に対する考え方もそうだが、日本人にとっての「常識」が「非常識」に感じられることは多々ある。アウェーな環境に身を置き自分がマイナーな存在となって、「正しいと思っていた日本の常識」の理由や効果を考え直すことは、異文化にいる人たちの気持ちを理解することになる。これがCultural Intelligenceを高める第一歩である。アウェーを味わうことがとても重要なのである。

蛇足だが、リターン・ポテンシャルの調査では、ジェネレーション・ギャップも分析しており、こちらも非常に興味深い結果が出ている。40歳以上と40歳未満で、価値観が大きく違うのだ。40歳以上の日本人と、40歳未満の日本人のギャップの差は、日本と外国並みに開きがあった。1月に45歳になったばかりの私は背中に汗をかいた。今回は調査対象としていないが、ジェンダー・ギャップを出しても面白い結果が得られるかもしれない。
日本の人口減、少子高齢化は待ったなしである。これからは国・年齢・性別の違いで人を区別し避けるのではなく、Cultural Intelligenceを高め、如何に多様な人々と協働し力を引き出し高いパフォーマンスを上げるかということが重要となるだろう。

出典:「早稲田大学トランスナショナルHRM研究所」会報第11号

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