COLUMN
「力を入れて外国籍人材を採用したものの、すぐに辞めてしまう」「外国籍人材の仕事に対するモチベーションを高めることができず、なかなか定着しない」。こうした人事担当の皆様からの声を受けて、当社では外国籍人材の本音から日本企業の受け入れ課題を明らかにするための共同調査を実施しました。
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『日本で働く外国籍人材の離職とモチベーションダウンに関する調査』※2021年8月実施
その結果、ダイバーシティ&インクルージョンを推進する上での施策として、①インクルーシブな採用の実現、②外国籍人材向けオンボーディング、③受け入れ体制の強化 が必要なことが判明しました。前回に引き続き、本コラムでは「②外国籍人材向けオンボーディング」について、7つのStepを中心にご紹介いたします。
①インクルーシブ採用を実現する7Step(多様な人材の評価と採用)についてはこちら
③外国籍人材を受け入れる職場向け教育と体制づくりの7Stepについてはこちら
INDEX
はじめに、昨今日本企業でも普及し始めた「オンボーディング(on-boarding)」の概念について説明します。欧米で発祥したオンボーディングとは、単なる新人研修やOJT制度のみを指すのではなく、新規に自社に採用されたメンバー(キャリア採用も含む)に対し、仕事をするうえで必要となる知識や技術、さらには企業理念や仕事のすすめ方、人間関係等を含む情報や価値観を伝えながら、組織の一員として定着させることを目的としています。継続的なオンボーディングの実施を通じて、新入社員の早期離職を抑止し、即戦力化を促すこと、また彼らのエンゲージメントを高めることで組織の生産性向上に繋がることが期待できます。
今回のテーマである「インクルーシブオンボーディング」とは、インクルーシブ(包摂的)なオンボーディングのことで、新入社員が組織に受け入れられていると感じながら職場に定着できるように支援することを指します。インクルーシブとは、日本語訳をすると「包括的な、包摂的な」といった意味となり、反対語であるエクスクルーシブ(「排他的な、閉鎖的な」)と照らし合わせると、その意味が捉えやすくなるでしょう。すなわち、「インクルーシブである」=「排除しない」「仲間はずれにしない」状態であることを示し、組織で働く誰もが、「組織に受け入れられ、尊重されていると感じ、最大限に能力を発揮することができている状態」を表しています。
したがって、「インクルーシブオンボーディング」では、新入社員に対し、インクルージョンに対する会社の取り組みを共有すること。また、一人ひとりの持つ多様性が会社にとって重要である点を伝えることがその入り口となります。
実際に海外では、従業員リソースグループ(ERG)やD&Iへのアプローチ方法(組織で使用されている特定のプログラムやイニシアチブなど)等、職場をよりインクルーシブにするためのリソースを共有することで、新入社員が早期に組織に馴染み、業績面でも良い成果が表れたという事例も多数報告されています。
この考え方は、外国籍人材の受け入れにおいても非常に重要です。特に異なる文化や慣習を持った外国籍人材が日本企業の価値観に馴染み、成長意欲を持って高い成果を挙げてもらえるようにするためには、オンボーディングの段階でいかに相互のギャップをなくしていくかが鍵となります。
このように、社員のオンボーディングにおいてもインクルーシブであることが求められる状況において、当社の『日本で働く外国籍人材の離職とモチベーションダウンに関する調査』によると、以下のような外国籍人材の定着をめぐる課題が明らかになりました。
⇒「トレーニングはなく、私はすぐに適応し、すべてを自分で学ばなければなりませんでした。」(その他資格、ルーマニア出身)
⇒「全く教育体制ができておらず、ちゃんとしたトレーニングもなく、できない/分からないことばかり頼まれました。」(身分に基づく在留資格、マレーシア出身)
⇒「外国人従業員は下手な日本語を話すので、日本語のトレーニングは非常に重要です。」(その他資格、インドネシア出身)
⇒「外国人のためのビジネスマナーや語学研修に加えて、上司や管理職のことを理解するための研修が重要です。」(技人国、アメリカ出身)
⇒「私は最初の就職先で、正規雇用の日本人従業員は受けられる職場研修を受けられませんでした。」(身分に基づく在留資格、ドイツ出身)
⇒「日本人全員が参加するトレーニングに参加できませんでした。参加を許されなかった理由を私が尋ねると、『外国人のためのものではありません』と言われました。」(身分に基づく在留資格、アメリカ出身)
⇒「入社後のオンボーディングをリードするメンバーがいませんでした。」(技人国・インド出身)
⇒「具体的な仕事のやり方を聞きましたが、誰も教えてくれませんでした。」(その他・マレーシア出身)
⇒「キャリア開発の道筋が整備されていませんでした。」(身分に基づく在留資格、オーストラリア出身)
⇒「明確なキャリアパスがありませんでした。」(技人国・アメリカ出身)
こうした課題は、外国籍人材の採用にばかり重点を置き、その後の定着・育成に関するプランニングが不十分であることや、人事サイドでは具体的な目標・計画設定がなされていても現場にまで浸透していないことなどが原因として挙げられます。外国籍人材の受け入れにあたっては、彼らのキャリアビジョンも踏まえながら、明確なオンボーディングプランをもって支援をしていく必要があるのです。
それでは、実際にインクルーシブオンボーディングの肝となる「新入社員(新規に採用された外国籍人材)でもキャッチアップできるプログラムの整備」を行うために、どのような準備が必要なのでしょうか。ここでは7つのStepに沿って説明していきます。
今回は、新入社員(新規に採用された外国籍人材)の早期戦力化と定着を促すインクルーシブオンボーディングについてご紹介しました。外国籍人材のオンボーディングにあたっては、会社側の意向と、実際の現場の方針とが合致している必要があります。まずは両者ですり合わせを行い、「新入社員に何を期待しているのか」「そのためにどのような支援を行うのか」を明確にし、その指針を新入社員がしっかりと理解できるように伝達するところから始めましょう。
そしてオンボーディングには、現場社員の協力が不可欠です。現場社員への教育や受け入れ体制のポイントについては、次回のコラムでお伝えいたします。
①インクルーシブ採用を実現する7Step(多様な人材の評価と採用)についてはこちら
③外国籍人材を受け入れる職場向け教育と体制づくりの7Stepについてはこちら