COLUMN
バックグラウンドチェックは、企業が採用候補者の適性や信頼性を評価するための大切なプロセスです。日本ではまだバックグラウンドチェックの実施はあまり浸透していませんが、海外諸国では職種によっては採用時に犯罪歴の確認が義務づけられるなど、広く実施されています。
本記事では、外国人採用におけるバックグラウンドチェックの目的や現状、行う際のポイントなどを詳しく解説します。
本ページの執筆・文責:株式会社Japan PI(採用調査・雇用調査サービス)
INDEX
バックグラウンドチェックとは、企業の採用プロセスにおいて候補者の学歴や職歴、犯罪歴、信用情報などの情報を確認することを指します。新しい従業員の採用前に、その人物の信頼性や適性を評価するための重要な手段です。
採用リスクを最小限に抑え、適切な人材を確保するために、欧米では多くの採用シーンで取り入れられています。しかしながら、日本をはじめとしたアジア諸国では、バックグラウンドチェックの重要性の認識、および法整備が遅れているのが実状です。
バックグラウンドチェックとリファレンスチェックは、どちらも採用プロセスにおいて実施される調査ですが、目的が異なります。
バックグラウンドチェックは、候補者の過去の学歴や職歴、犯罪歴、信頼情報など、客観的な事実を確認するための広範な調査です。
一方で、リファレンスチェックは、候補者の前職の上司や同僚から直接フィードバックを得るプロセスです。候補者の職務遂行能力やチームでの協働性、人間性などについての評価を収集することを目的としています。
バックグラウンドチェックとリファレンスチェックを併せて行うことで、異なる側面から候補者の適正を評価することができます。
バックグラウンドチェックの目的は、採用候補者の正確な経歴を確認し、採用プロセスを公平かつ安全に進めることです。特に、過去に犯罪歴や問題行動がないかどうかを確認することで、職場環境への悪影響や業務上のトラブルの予防につながります。
これにより、企業は不適切な人材の採用リスクを低減し、社内の秩序や業務効率を守ることができます。
また、近年では候補者のコンプライアンス意識やネットリテラシーなどの情報が確認されることもあります。バックグラウンドチェックは企業の価値観や行動基準に合致する人材を確保するための手段として活用されています。
実際の採用現場でバックグラウンドチェックはどのように浸透し、行われているのでしょうか?ここでは、日本におけるバックグラウンドチェックの現状について紹介します。
2024年3月19日、イギリスの「DBS(Disclosure and Barring service)制度を参考にした日本版の制度を導入するための法案が閣議決定しました。
「日本版DBS」法案は、教員や保育従事者などによる子どもへの性暴力防止を目的としています。内容は、性暴力を防止する手段の一つとして、事業者が採用プロセスにおいて、候補者の性犯罪の前科の有無を確認することを義務づけるというもの。違反した場合には、公表などの対象となります。
参照:NHK政治マガジン
この「日本版DBS」法案の導入は、日本におけるバックグラウンドチェックの重要性がますます高まっていることを示しています。特に、子どもを守るために、教員や保育事業者などの職種で性犯罪歴の有無の確認が義務化されることで、企業や教育機関は採用プロセスにおいてこれまで以上に厳格なチェックを行う必要が出てきます。
現状、日本を含むアジア諸国はバックグラウンドチェックの法整備が遅れていると言われています。しかしながら、採用基準の透明性と安全性が重視される中、日本全体でバックグラウンドチェックを導入する企業は今後増えていくことが予想されるでしょう。
近年のAIツールの発展により、各国の現地言語でのメディア調査が容易になりました。これにより、日本ではあまり知られていない他国の情報を効率的に収集できます。
日本企業がアジアの人材を採用する際、主に以下の国々が対象となります。
⇒中国、香港、台湾、韓国、ベトナム、ミャンマー、ネパール、インドネシア、フィリピン
これらの国々における出身大学の評価や、低所得地域(経済的に課題を抱える地域)に関する情報は、AIを活用したメディア調査により迅速に入手することが可能です。
なお、低所得地域では、貧困に起因する社会保障、医療、教育の不足により、犯罪や違法な経済活動が広がりやすい環境が形成されます。これらの要因が、一部の人々を反社会的な行動に走らせる可能性があることに留意する必要があります。
参照:「ベトナムの低所得地域に関する情報」をAIツールを活用して調査した例
採用調査・雇用調査を行うJapanPIの小山氏にAIツールなどを活用した情報収集の方法についてお伺いしました。
①翻訳アプリで、ベトナム語の質問を作成します。
質問:「ベトナムの低所得地域についてベトナム語で検索してください。」
回答:“Tìm kiếm bằng tiếng Việt cho khu vực thu nhập thấp ở Việt Nam.”
②翻訳アプリにて生成されたベトナム語の質問を使用し、情報検索では最強のAIであるPerplexityで検索します。すると、ベトナム語サイトの検索結果がベトナム語で得られます。
③その結果をさらに、翻訳アプリで日本語に翻訳します。その結果は以下の通りです。この手法で、更に、詳細な地名や個人の氏名についても、現地語で情報収集することが可能です。
<ベトナムの低所得地域の調査>
ベトナムは急速に発展している経済を持つ国ですが、依然として低所得の地域が多く存在します。以下は、ベトナムの低所得地域に関するいくつかの情報です。
1. 農村部
平均収入: 農村部は都市部と比べて収入が低い傾向があります。2023年には、都市部の平均収入は月額626万ドンに達しましたが、農村部はこれよりもかなり低いです。
職業: 農林水産業に従事する労働者の平均収入は月額410万ドンで、工業やサービス業と比較して低いです。
2. メコンデルタ地域
経済状況: この地域は農業、特に稲作に大きく依存しているため、収入が低いです。観光業や水産業の発展の可能性はあるものの、インフラやサービスが未発達です。
3. 北西部および中央高地地域
特徴: この地域は山岳地帯で自然条件が厳しく、収入が低いです。多くの少数民族が居住しており、教育や医療へのアクセスが困難です。
収入: 経済的および社会的条件が厳しいため、これらの地域は全国平均よりも貧困率が高いです。
4. 北中部地域
経済状況: この地域も農業に大きく依存しており、他の地域と比べて収入が低いです。ダナンのような発展した都市もありますが、周辺の省は経済的に困難を抱えています。
5.全体状況
一人当たりの平均収入: 世界銀行によると、ベトナムは一人当たりの国民総所得(GNI)が1,136ドルから4,465ドルの範囲にあり、中低所得国に分類されています。
所得格差: 2023年のベトナムのジニ係数は0.374で、所得格差が中程度であることを示しています。
全体的に、ベトナムは経済発展で多くの進展を遂げていますが、依然として収入や生活条件を改善する必要がある地域が多く存在します。
引用文献:
[1] [Vượt qua bẫy thu nhập trung bình: nhìn từ bối cảnh nền kinh tế Việt](https://tapchinganhang.gov.vn/vuot-qua-bay-thu-nhap-trung-binh-nhin-tu-boi-canh-nen-kinh-te-viet-nam-hien-nay.htm)
[2] [Danh sách đơn vị hành chính Việt Nam theo GRDP bình quân đầu](https://vi.wikipedia.org/wiki/Danh_s%C3%A1ch_%C4%91%C6%A1n_v%E1%BB%8B_h%C3%A0nh_ch%C3%ADnh_Vi%E1%BB%87t_Nam_theo_GRDP_b%C3%ACnh_qu%C3%A2n_%C4%91%E1%BA%A7u_ng%C6%B0%E1%BB%9Di)
[3] [Việt Nam là nước thu nhập trung bình thấp; 10 triệu đồng/người](https://www.voatiengviet.com/a/viet-nam-nuoc-thu-nhap-trung-binh-thap-10-trieu-dong-nguoi-thang-dien-giau/7576025.html)
[4] [Mức lương trung bình của người Việt Nam năm 2023 là bao nhiêu?](https://thuvienphapluat.vn/lao-dong-tien-luong/muc-luong-trung-binh-cua-nguoi-viet-nam-nam-2023-la-bao-nhieu-7584.html)
[5] [SỔ TAY HƯỚNG DẪN VỀ CƯ TRÚ VÀ LAO ĐỘNG](https://www.moj.go.jp/isa/content/930005834.pdf)
[6] [Nơi giàu nhất Việt Nam có thu nhập bình quân 6,52 triệu đồng](https://stockbiz.vn/tin-tuc/noi-giau-nhat-viet-nam-co-thu-nhap-binh-quan-652-trieu-dongnguoithang/25001154)
[7] [Tổng Quan về Việt Nam – World Bank](https://www.worldbank.org/vi/country/vietnam/overview)
[8] [Thông cáo báo chí Kết quả Khảo sát mức sống dân cư năm 2023](https://www.gso.gov.vn/tin-tuc-thong-ke/2024/04/thong-cao-bao-chi-ket-qua-khao-sat-muc-song-dan-cu-nam-2023/)
今回は、ベトナムの低所得地域に関する情報を調査。日本語でリサーチをした際に見つからなかった情報も、現地言語を使うことで効率的に情報収集ができました。
ベトナムの低所得地域は、主に北部中山間地域、中部高原地域、北中部および中部沿岸地域の一部に集中していることが分かります。これらの地域は大きな経済的課題と高い貧困率に直面しています。
参考サイト(英語):
Top 10 Provinces, Cities with Highest, Lowest Poverty Rates in Vietnam
Which province has the largest gap between rich and poor in Vietnam?
バックグラウンドチェックで調査すべき内容を5つ紹介します。
バックグラウンドチェックでは、候補者が提示した学歴情報の正確性を確認するために学歴の調査を行います。卒業証明書や学位証明書の提出を求め、学校名や専攻、卒業年度などが一致しているかどうかを調べます。
また、資格や免許の有無も確認の対象になります。偽造された証明書の提出や誤った申告を防ぐため、教育機関への直接照会や公的なデータベースを利用することが一般的です。
学歴は、職務の適性や専門知識の証明として重要な要素であり、正確な情報の確認が不可欠です。
職歴の調査では、候補者が提出した履歴書や職務履歴書の内容が正確かどうかを確認します。具体的には、過去の雇用先や職位、勤務時間、担当業務、退職理由などが対象となります。
企業によっては、前職の雇用主や同僚から評価情報を収集するレファレンスチェックを行うこともあります。
職歴の調査で候補者の実務経験や職場での評価を確認することは、採用後の業務適応度や信頼性を見極める手段となります。不正な職歴の申告を防ぐためにも、詳細な確認が必要です。
候補者が過去に法的な問題を抱えていないかを確認するために、犯罪歴や民事訴訟歴も調査します。犯罪歴の確認では、自己申告をベースに新聞記事や訴訟記録の私的データベース、関係者への取材などで過去の違法行為や逮捕歴を調べ、職場の安全性を確保します。
民事訴訟歴では、候補者が過去に関与した裁判や法的紛争の有無とその内容を確認し、信用性やトラブルリスクを評価します。これらの調査により、企業は潜在的なリスクを予測し、トラブル回避のための適切な採用判断が可能です。
候補者の財務状況や経済的信頼性を確認するために、信用情報の調査を行います。クレジットスコアや借入履歴、支払いの遅延、破産歴などが対象となり、主に金融機関や信用情報機関から情報を取得します。
特に、財務関連のポジションや信頼が重要な職務においては、候補者が財務管理能力や経済的な安定性を持っているかを確認することが重要です。また、過去に重大な信用問題があった場合、職場でのリスクとなる可能性があるため、慎重な確認が求められます。
反社チェックは、候補者が反社会的勢力と関係を持っていないかを確認するための調査です。過去の勤務先や所属団体などを調べ、反社会的勢力との接点がないかを確認します。
特に、企業のコンプライアンスを重視する現代において、反社チェックは企業の信用を守るために不可欠です。反社チェックは、企業の評判や安全を守るために行われ、違法行為に関与するリスクを排除する役割を果たします。
バックグラウンドチェックを行う際に注意したいポイントを3つ紹介します。
バックグラウンドチェックを行う際は、候補者の同意を事前に取得することが重要です。個人情報保護の観点から、本人の許可なく個人情報を収集することは法律違反となる可能性があります。
候補者に対してどのような情報をどのような範囲で調査するのかを明確に説明し、同意を得ることで、後々のトラブルを回避できます。同意を文書で残しておくと、法的なリスク管理の一環として有効です。
バックグラウンドチェックを行う際は、できるだけ一般に公開されている情報を収集することが基本です。これは、法律や論理に従って調査を進めるために重要なポイントとなります。
たとえば、インターネットやSNS上で公開されている情報は誰でも閲覧できるので合法的に利用できますが、プライベートな情報やアクセス制限のかかっている内容に無断でアクセスすることは法律違反に当たる可能性もあります。
公的な記録やオープンデータを活用することで、合法的かつ信頼性の高い情報収集を心がけましょう。
<お役立ち情報>
AIツールや翻訳ツールを使って、英語や現地言語でリサーチを行えば効率的に最新情報を集められます。たとえば、選考に役立つ各国の大学ランキング情報も収集可能。
参考:Best universities in South Korea 2024 【大学ランキング情報(韓国)】
バックグラウンドチェックを行う際は、リファレンスチェックの実施も検討することが推奨されます。候補者の前職の上司や同僚から直接評価を得ることで、提供された情報の正確性や業務遂行能力、職場での人間関係などを確認できます。
リファレンスチェックを行うことで、候補者の経歴だけでは見えにくい人間性や仕事への取り組み方などの情報を得られるメリットもあります。ただし、調査を行うにあたっては、リファレンス先や連絡方法について候補者の同意を得ることが重要です。
バックグラウンドチェックは、企業が採用リスクを最小限に抑え、適切な人材を確保するための大切なプロセスです。しかしながら、バックグラウンドチェックの実施には、法的な配慮や専門知識が求められます。
そのため、実績を持つ調査会社に依頼することも検討してみてはいかがでしょうか。