COLUMN
外国人採用が盛んになる中、日本人と異なり言葉の壁が立ちはだかる外国人の採用においては、採用基準の設定や人材の見極めが難しく、人事担当者が頭を悩ませていると言います。そこで今回は、外国人を採用する際に重視する点について解説します。
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INDEX
最近では、採用基準の一つとして「カルチャーフィット」という言葉をよく耳にするようになりました。直訳すると「文化適合」ですが、採用においてはその人の持つ元々の性格や価値観、行動特性が企業に合っているかどうかを測る基準です。昨今、国内採用においてもカルチャーフィットしているどうかを見極める手法は採用基準の一つとして多く取り入れられています。
一方、「カルチャーアダプテーション」とは、異文化や新しい環境、慣習に慣れるための適応能力のことを言います。多くの人は、異文化に入るとその環境や慣習の違いに戸惑うものですが、そこからその環境に慣れてモチベーションを回復できるかどうかは、カルチャーアダプテーションが高いかどうかで測ることができます。
日本人でもそうですが、例えば転職をして新たな職場に入った際に、前職との違いを前向きに捉える能力がある人と、過去のやり方に囚われて後ろ向きに捉えてしまう人がいます。このように、国の違いや文化の違いは露骨に行動に現れるのです。
組織には、多くのルールが存在しますが、そこには大きく分けて二種類のルールが存在します。
一つは、就業規則や雇用契約、ジョブディスクリプションなどの『明文化されたルール』。そしてもう一つは、価値観や仕事観、慣習、行動パターンなど、いわゆる社風やチームカラーにも相当するような『明文化されていないルール』で、例えば、日本人同士であれば「なんとなく言わなくてもわかる」というような暗黙のルールのことです。
ただし、この「なんとなくわかる」という感覚は、国や地域によって文化や慣習が異なるため、色々な国や地域の人が集まって一つのチームを創る際には通用しづらく、コミュニケーションのズレが生じやすくなります。
例えば、5分前行動といったように時間に対する強い意識を持っているのは、世界でも日本だけだと言われています。これは歴史的に積み上げられてきた習慣(暗黙知)であるため、外国人から驚きを持たれることは少なくありません。
本来、その組織の人々が文化や慣習の違いを認めながらズレを修正し、適応していくことで組織は形成されていくものですが、果たして日本の文化やに慣習は、外国人にとって適応しやすいものなのでしょうか。
当社で行なった日系企業での就労経験がある外国人へのインタビューでは、外国人が感じる日本文化の疑問点として以下のような項目が挙げられています。
例えば、コミュニケーションにおいて「答えが遠回し。直接言わない。」ということや、時間の感覚について「始まりは守るが終わりを守らない。」など、日本人としては少し耳が痛いような項目も多くあります。
ここからも、日本人の日常的な文化や慣習に対して、外国人からは多くの疑問があることを感じ取れます。
また、世界62カ国における文化とリーダーシップの関係について調査分析を行った大規模プロジェクト『GLOBE』によると、他国に比べて日本人は「計画性を重視する」「集団主義が強い」傾向が強い一方で、「業績志向が弱い」「自己主張をしない」、さらに「帰属意識が低い」傾向があることがわかっています。
このデータからわかることは、他国に比べて各項目が最も高い、もしくは最も低いところに偏っており、言うなれば「極端な考え方を持った文化」であるということです。
これらの情報から日本という国は、世界各国から見ると特殊な文化や慣習を持ち、適応することが容易ではない国の一つであるということを認識することができます。
つまり、日本や日本企業に「カルチャーフィット」した人材を確保しようとしても、なかなかそのような人に出会うことはできません。また、せっかく採用したとしてもカルチャーショックを受け、定着せずに「飛んでしまった」というようなことが起こりかねないのです。
国内の採用活動においては、新卒採用であっても中途採用であっても、多くの面接官は自社の企業文化や環境に馴染めそうな人材を面接での会話を通して見極めています。しかし、外国人の採用となった途端に、面接での言語的コミュニケーションが極端に減少するため、その人自身の人間性や適応能力、つまりカルチャーアダプテーションを見極めるにいたらず、適切な採用ができていないケースが多くなります。
しかし上記の通り、日本は世界各国から見ると特殊な国であるため、残念ながら日本企業にカルチャーフィットしている人材を採用することは非常に困難です。そのため、最初からフィットしている人材ではなく、適応力があるカルチャーアダプテーションが高い人材の採用が非常に有効的です。
また、カルチャーアダプテーションが高い人材は、新しい環境や日本企業の文化、慣習に適応しようとする力が高いため、今後、カルチャーフィットした人材になる可能性が高いのです。そのため、カルチャーアダプテーションが高いかどうかの見極めこそが、日本企業の外国人採用において重視すべき点だと言えるのです。
前述の通り、外国人には日本文化や慣習に違和感を持たず、すぐに適応できる人材はごく少数であるため、国内の人材を採用するときのように「阿吽の呼吸」で通じることを当たり前に期待して外国人採用をすることはほぼ不可能です。
つまり、日本企業の外国人採用において「カルチャーフィット」を重視するべきなのか、「カルチャーアダプテーション」を重視するべきなのかでいうと、やはり「カルチャーアダプテーション」を重視べきだというに結論に至ります。
ただし、面接でのカルチャーアダプテーションが高いかどうかの見極めは、様々なトレーニングを積み、多くの時間をかけてようやく手に入れることができるもので、簡単に出来ることではありません。
よって、今後さらに激化する外国人採用を成功に導くためには、人に帰属した面接技術だけではなく、数値化されたデータに基づいて見極めが出来る適性検査というツールを積極的に取り入れ、多くの採用担当者が言語の壁を乗り越えて、その人の適応能力を見極められるようにすることが非常に大切になってくるのです。
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