COLUMN
ダイバーシティは、1960年代にマイノリティの雇用機会均等や地位向上のために米国で発祥した概念です。もともとは、「ジェンダー、人種、民族、年齢に おける違いのことをさす」と定義されていました。しかし現在では、対象となる属性も拡大し、企業の競争力強化に不可欠な人材戦略として捉えられています。
ダイバーシティとは「人材の多様性」を意味し、「多様な人材が組織に存在している」状態を指します。あくまでも、組織の中に属性の異なる人々が存在するものの、一人ひとりの能力を活用できてる段階には至っていない状態です。
ダイバーシティは、本人の意思で変えることのできない表層的ダイバーシティと外見から判断することが難しい個性やアイデンティティの違いである深層的ダイバーシティの二つに分けることができます。
INDEX
日本でダイバーシティの議論が始まったのは、米国がダイバーシティを人材戦略として捉えはじめてから20年後の2000年のことでした。「グローバル化」「産業構造の変化」「少子高齢化」といった企業を取り巻く環境の変化に対応するため、日本人男性中心の人材戦略に変わる戦略としてダイバーシティが導入されました。現在は、政府がダイバーシティ2.0と銘打って「人材の多様性とビジネスの成果を結びつける経営戦略」であるダイバーシティ・マネジメントを推進しています。
ダイバーシティは5つのステージに分けることができます。
ステージ1 |
「抵抗(違いを拒否する)」 |
ステージ2 |
「同化(違いを無視する・同化させる)」 |
ステージ3 |
「多様性尊重(違いを認める・尊重する)」 |
ステージ4 |
「分離(違いをビジネスに活かすため、マイノリティをマジョリティと分けて活用している状態)」 |
ステージ5 |
「統合(違いを活かし、相乗効果をおこしている状態)」 |
ダイバーシティ・マネジメントが機能している段階が、「分離」と「統合」のステージであり、ダイバーシティ&インクルージョンを達成している段階は「統合」のステージになります。
日本企業の多くは、まだダイバーシティ・マネジメントが正常に機能していない「多様性尊重」のステージにあります。このステージでの取り組みは、人材の多様性をビジネスの成果に結びつけることではなく、多様な人材が定着するための従業員のモチベーションやエンゲージメントの向上が目的となっています。
(出典先:経済産業省「ダイバーシティ2.0 一歩先の競争戦略へ」)
(出典先:経済産業省「ダイバーシティ2.0 一歩先の競争戦略へ」)
(ダイバーシティ2.0 行動ガイドライン 実践のための7つのアクション)
(出典先:経済産業省「ダイバーシティ2.0 一歩先の競争戦略へ」)
令和2年度「新・ダイバーシティ経営企業100選」に選出された3社をご紹介。
① ダイバーシティ認知拡大のためWEB社内報やライフステージ別サマリーを発信
② 幼い子供をもつ社員を集めて「パパママcafé」を実施
③ 育児と仕事を両立するためのハンドブック「育児・仕事応援BOOK」の作成
④ 育児者をフォローする社員を社内表彰することで、有休取得や男性育休取得などに繋げる
⑤ 女性の活躍推進にあたり、育児休暇明けの女性社員がリーダーとなるプロジェクトの立ち上げ
⑥ LGBTの社内研修を実施
⑦ 障がいのある方や、シニア人材が活躍可能な屋内ハーブ農園の「カンロファーム」をオープン
⑧ テレワークやフレックスタイム制などの多様な働き方の促進
① 専任組織である「ダイバーシティ推進グループ」の設置
② 「管理職女性比率、役員女性数、新卒女性比率」に関する女性活躍KPIを掲げ、全社員に対するダイバーシティ意識の浸透
③ 仕事と育児・介護等の両立支援制度の整備
④ キャリア開発に対する意識向上を目的とした研修・異業種交流会派遣
⑤ 男性育休の推進などを通じて、女性リーダーの育成を促進
⑥ 世の中の変化に対応して「変わり続ける」ことの重要性を経営トップが継続的に発信
⑦ 残業平均20時間/人・月以下、年休行使20日/人・年以上を目標に、勤務時間の効果的な活用とメリハリのある働き方を推進
① 働く場所の裁量拡大:シェアオフィスやワーケーション等、就労可能な場所の選択肢を拡大
② 働く時間の裁量拡大:自立型人財の育成に資する裁量労働制への移行を検討
③ 全社員を対象にアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)に関する研修を継続的に実施
④ リモートワークが常態化する中、活動の可視化とコミュニケーションの活性化によるエンゲージメント向上とパフォーマンスの最大化に向けたガイドラインを発信
⑤ 管理職に対して育児支援に関する制度やイクボス(部下や同僚の育児・介護等に配慮・理解のある上司)に関する研修を実施
⑥ 制度整備、各種研修、e-learningなどを活用したキャリア啓発・教育の充実・社内外への越境機会を拡大し、新たな成長機会・キャリア開発の機会を提供する。
⑦ 育児休職取得時には、スムーズな復職に向けた保育園等の情報提供や休職中の自己啓発の支援
⑧ 若手/女性リーダーの育成:若手社員や女性社員対象のキャリア開発プログラムや挑戦機会の拡充により、多様なリーダーを育成・輩出
⑨ ベテラン層の個の発揚:ベテラン層ならではの能力発揮の機会を設定し、年齢を問わず継続的なチャレンジができる環境を整備
2020年からのコロナウイルスの感染拡大は、人々の意識や消費行動、働き方を急速に変えることになりました。ダイバーシティは予測不能な現代の企業成長・存続のために推進されてきましたが、いまや企業が生き残るための必須の条件となっています。
多様な人材が存在するだけでは、企業の価値を高めることはできません。また、社会や政府から求められているからという受け身の姿勢では形だけのダイバーシティで終わってしまいます。経営層をはじめ、全社員がダイバーシティ推進の重要性を認識し、積極的に意識や行動を変えていくことで、ダイバーシティ&インクルージョンを実現させましょう。
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ダイバーシティ&インクルージョンとは(まとめ)