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INDEX
ダイバーシティ・マネジメントは個人の成果と組織の成果が結びついてはじめて正常に機能しているといえます。そして、その実現には「組織の誰もがありのままの自分を受け入れられ、尊重されていると感じ、能力を最大限に発揮することができる」インクルージョンの文化が組織に浸透している必要があります。
多様な人材が組織にいるだけでは、組織力が向上しないどころか、組織力の低下をまねくことになります。なぜなら、多様化を進めると、①コミュニケーションに齟齬が生じる ② 価値観による対立が起きる ③団結力がなくなるといったマイナス面が出てくるからです。内閣府の「労働市場の多様化が経済に与える影響」によると多様な人材を増やす一方で、何の取り組みもしなかった企業では、生産性が低下していることが指摘されています。
(出典先:内閣府「第3節 労働市場の多様化が経済に与える影響」)
人材の多様性を活かすためには、ダイバーシティ・マネジメントと呼ばれる「人材の多様性を活かして、企業価値を高める戦略」を実践していく必要があります。そして、ダイバーシティ・マネジメントが成功している状態がダイバーシティ&インクルージョンであり、「組織の誰もが多様性を受容・尊重されていると感じ、最大限の能力を発揮することができ、その成果が企業の成果と結びついている状態」を意味します。
そもそもインクルージョン(inclusion)とは、日本語訳をすると「包括、包摂」といった意味合いになります。一方で、インクルージョンの反対語はエクスクルージョン(exclusion)であり、「排除、隔離」といった意味を示します。したがって、「インクルージョン」=「排除しないこと」「仲間はずれにしないこと」を表すという点を、念頭に置いておく必要があるでしょう。
尚、このインクルージョンの概念は、1980年代にヨーロッパで始まった政策理念である「ソーシャル・インクルージョン」に由来すると考えられています。1970年代のフランスでは、社会的経済格差により貧困状態から抜け出せない労働者が多数発生し、その状態を「ソーシャル・エクスクルージョン(社会的排除)」と呼びました。それらを解決するための理念として、“誰も排除されず、全員が社会に参画する機会を持つ”必要性を説く「ソーシャル・インクルージョン」が提唱されたという背景があり、この考え方は現代のビジネスにおいても不可欠なものとなっています。
「持続可能な開発目標(SDGs)」全体の理念にも「誰一人取り残さない」という概念がありますが、この理念はまさにダイバーシティ&インクルージョンの思想と合致していると言えるでしょう。
日本経団連のダイバーシティ&インクルージョンの調査によると、ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みで一番多いのが「多様な社員が働きやすい労働環境の整備」となっています。しかし例えば、育児や介護中の社員が「主戦力とは認められていない」と感じたり、「他の社員に迷惑をかけている」と気にしていた場合や、働いている本人が他の人と違う部分を晒すことに抵抗を感じている場合は、ありのままの100%の能力を発揮することはできないし、異なる個性を持つ人達とシナジーを生み出すことはできないでしょう。つまり、組織の誰もが多様性を受容・尊重し合う文化があってこそ、人は最大限の能力を発揮することや多様な人材同士でイノベーションを起こすができるのです。
(出典先:日本経団連「ダイバーシティ&インクルージョンの調査」)
ダイバーシティ先進国の米国では、ダイバーシティ・マネジメントを成功させるためにはインクルージョンの文化が欠かせないという意識が浸透しています。また、企業側だけではなく、働く人にもインクルージョンの重要性は浸透しており、米国デロイトの調査によると、働く人の80%は企業選びの重要な判断基準に、インクルージョンを挙げています。また72%は、よりインクルージョン意識の高い企業へ転職する可能性があると答えています。(https://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/us/Documents/about-deloitte/us-about-deloitte-inclusion-survey.pdf)
米ガートナー社は、インクルージョンのための7つのカギを特定しました。それが、「公平な待遇」「相違の統合」「意思決定」「心理的安全性」「信頼」「帰属意識」「多様性」です。米国のダイバーシティ先進企業では、インクルージョンを実現するために、これら7つのカギを意識した取り組みが既に行われています。
包括的なデジタルダッシュボードを展開し、適切な人材をより効果的かつ迅速に特定して採用するために、予測人材モデルをテストおよび検証。また、プロセス全体で多様性が確実に受け入れられるように、採用慣行にも注力。
賃金を知らせるために市場の状況を継続的に評価し、毎年の年次報酬プロセスの一環として、会社全体で賃金に関する推奨事項を厳密にレビュー。分析により増加が必要であると判断された場合、報酬を調整。
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現在、多くの企業がサステナビリティ活動にダイバーシティ&インクルージョンを掲げ、ダイバーシティを促進しています。しかし実態は、差別などのマイナス要素を0にする取り組みに満足しており、人材の多様性をどのように活かし、どのようにビジネスの成果に結びつけるかという視点が欠けている企業が多いのではないでしょうか。真のダイバーシティ&インクルージョンを実現するために、インクルージョンの文化を組織に根付かせることが必要です。
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ダイバーシティ&インクルージョンとは(まとめ)