COLUMN
外国人を採用する理由は、各企業それぞれです。しかし、中途採用と新卒採用の手法や採用基準が異なるように、外国人採用もまたそれに適した手法や採用基準をしっかりと考えながら採用活動を行うことが大切です。そこで今回は、外国人を採用する際の採用基準=「モノサシ」について解説します。
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INDEX
国内外問わず人材の採用においては、雇用のミスマッチを防ぐべく、面接に加えて適性検査や筆記試験を取り入れる企業も多く、一般的に、国内の新卒採用や中途採用においては以下のような判断材料を以って採用の可否を決定しているのではないでしょうか。
①適性検査や筆記試験:自社が必要とする技術的な能力や経験
②面接試験:コニュニケーション能力を中心とする人物特性
特に日本企業では、中途採用でも新卒採用でも面接を重視する傾向にあり、適性検査や筆記試験でふるいにかけたあと、面接で人物特性を見極め、自社の社風や方針に共感できる、もしくは適応できる人物かどうかを判断します。
つまり、ダイバーシティが叫ばれる現代においてもなお、日本企業では言語コミュニケーションを通じた面接が最も重視され、コミュニケーション能力や自主性、協調性などと言った人物特性が、採用試験において重視されるポイントになっているのです。
外国人採用においてはどうかというと、別の記事(外国人採用のカギを握る『CQ』とは
)でも触れた通り、CQという異文化に適応する能力があるかどうかが非常に大切な見極めポイントになりますが、果たして異文化適応力(CQ)が高い人材と低い人材にはどのような違いがあるのでしょうか。
異文化適応力(CQ)が高い人材は、これまでの自分自身の経験とうまくインテグレーションさせながら異文化やおかれた環境を受け入れようとする能力が高いため、たとえカルチャーショックを受けたとしても立ち直り、その文化や慣習の中に自然と馴染めるようになっていきます。そのため、日本企業でも活躍できる人材になりやすいのです。
一方、異文化適応力(CQ)の低い人材はどうかと言うと、異文化に適応する力がないため、異文化における違和感を受け入れられないまま無理に同化しようとしたり、そもそも拒否反応を起こしたりしてしまうため、カルチャーショックを受けた後に立ち直ることができず離職につながったり、チームメンバーとのトラブルに繋がりやすくなります。
これは、日本国内の中途採用の場合でも同じです。前職までの経験を生かしながら新しい職場にうまく馴染んで活躍できる人と、前職の慣習をそのまま引きずり、新しい職場の社風や方針を受け入れられずに活躍できずにいる人との違いと非常によく似ています。
日本企業の多くが、採用試験において面接での人物判断が大きな割合を占める傾向にあり「言語コミュニケーション」を重視していることから、外国人採用においても日本語が話せるかどうかを重視してしまうという傾向にあります。
しかし、危険なのは「日本語が話せる=優秀である」と言う幻想です。
言語力はコミュニケーションを図るために大切な要素の一つですが、日本語が話せるというだけで採用の可否を判断してしまうのは、大変危険です。
なぜなら、日本語が話せるということは、言語コミュニケーションが比較的スムーズであるため、他の能力を全て差し置いて優秀に見えてしまうという印象操作が働いてしまい、本質的な能力を見極めることができないからです。
もちろん、外国人が日本語をスムーズに話せるようになるには相当な努力が必要であることは想像に難くありませんが、日本語が話せるということ以外の能力、例えば国内の人材採用の際に面接や適性検査の中で見極める、自社に合うかどうかという人物判断を何で行うかということです。
例えば、同じ言語や文化の中で生活する日本人に対して行う適性検査で、全く異なる言語や文化で生活する外国人の能力を図ろうとしても、適切な判断ができるとは言えません。
そもそもそれは、採用における「モノサシ」が誤っているのです。このように誤った「モノサシ」で外国人の採用活動を行うことによって、「日本語が話せる優秀な人材を採用したはずなのに、活躍してくれない」という状況を生み出してしまいます。
つまり、日本語が話せる人=優秀であるというのは誤った「モノサシ」で判断してしまった日本人が抱く勝手な幻想であり、その人の本質的な能力を見極めたことにはならないのです。
外国人が持っているスキルや経験を生かして日本企業でパフォーマンスを発揮するにはどうすれば良いのかということについては、今後さらに重要な課題になってきますが、外国人材を活用しきれていないという日本企業がまだまだ多いことは否定できません。
日本企業で働くにあたっては、異なる文化の中で生まれ、生活をしてきた彼ら自身の異文化
適応力(CQ)が大切であることは前述の通りですが、それと同時に、雇用側である日本企業が彼らの価値観や能力を理解することもまた、外国人採用において非常に重要なポイントだと言えます。
彼らが何のために、どういう意志を持って日本企業で働こうとしているのか、またどういう価値観を持っているのか、さらにどのような性格特性や能力を持っていてどういう環境が適しているのかなど、彼ら自身やその心理を掴むことで彼らの能力を発揮させやすくなります。
例えば、日本企業でありがちな「ちゃんとやりなさい」という指示は、文化の違いや、モノサシの違いによって、その人の能力を発揮させる機会を逃している可能性がありますし、慣習の違いだけで能力が低いと判断してしまうことで、彼らの活用のチャンスを逃してしまっている可能性も十分にあるのです。
つまり、外国人がパフォーマンスを発揮するためには、彼らの価値観の中にある日本で働く目的意識や意志の強さなど、彼らの本質的な心理を掴む必要があるのです。
日本でもダイバーシティマネジメントが叫ばれる中、今後国内採用においても、人に帰属した面接のような言語コミュニケーションに頼った採用基準ではなく、データ化された情報を基にした採用基準を設定する必要性に迫られていくと考えられますが、外国人採用においてはすでに、そういった必要性に迫られているのではないでしょうか。
これまで述べてきたように、同じ文化や慣習を持つ国内人材と同じ「モノサシ」では、本来必要とする外国籍人材の能力を図ることはできません。
そのため、日本人と外国人の「モノサシ」の違いを理解した上で、それをより効率的かつ効果的に、そして適切に判断するために、外国人採用に適したツールを活用することが推奨されているのです。