COLUMN

[HRプロ連載記事]第18話:「HRテクノロジー大賞」受賞記念セミナー サマリーレポート~Day2・3・4~

8.連載記事

この度、弊社の「CQIサービス」が「HRテクノロジー大賞(※1)」の「採用サービス部門優秀賞」を受賞いたしました。いつも応援していただいている皆様に、この場を借りて感謝申し上げます。この受賞を記念して、2020年8月31日~9月4日までの1週間、「多様性がもたらす日本企業の革新」というテーマでさまざまな有識者にお集まりいただき、特別講演会を実施。5日間で合計1,000名を超える方々から予約をいただき、盛況に終えることができました。それぞれのテーマに関し、大変示唆に富んだセミナーでしたので、このコラムをお読みいただいている皆様にサマリーをお届けし、日々の仕事にお役立ていただければと思います。

なお、セミナー初日にご登壇の一橋大学 名誉教授の米倉誠一郎先生、最終日のラグビー元日本代表キャプテンの廣瀬俊朗さんとは、私との対談形式でセミナーを実施しました。その模様は、それぞれ次回以降(10月・11月)のコラムで掲載いたします。今回は、Day2~4におこなわれた「パネルディスカッション」をダイジェストでお送りいたします。この3日間でそれぞれの分野のスペシャリストからいただいた「キーワード」をまとめていますので、ぜひご覧ください。

※1:「HRテクノロジー大賞」は、経済産業省、産業技術総合研究所、情報処理推進機構、中小企業基盤整備機構、株式会社東洋経済新報社、株式会社ビジネスパブリッシング、HRテクノロジーコンソーシアム(HRT)、HR総研(ProFuture株式会社)の後援で、1年に1度、日本の「HRテクノロジー」や「人事ビッグデータ」などの対しする優れた取り組みを表彰している「人事業界最大級のアワード」です。2020年は第5回が開催されました。

Day2:研究データから見る「日本流のダイバーシティ」とは


●第1部 講演
講演者

正木郁太郎 氏(東京大学大学院 人文社会系研究科 研究員、成蹊大学 非常勤講師)

講演テーマ
研究データから見る「日本流のダイバーシティ」とは?

<講演ポイント>
【研究データから見る「日本の文化の特徴」とは】

・主要なアジア圏の国々と全体的な傾向は似ているものの、「上下関係の尊重」や、「挑戦」よりも「安定」を重視する点では、他国と乖離がある
・文化差を可視化することで、違いに「正しく気を付ける」ことができる

【外国籍人材が日本になじむには、どのような特徴が必要か】
・外国籍人材が自分の価値観も大切にしながら、新しい環境になじむ「Integration(統合)」というステータスが望ましい。
・データ上、来日の目的意識・モチベーションが強い人ほど日本になじみやすいという傾向がある。
・努力すべきは「なじむ側」だけではない。むしろ、受けいれる側の工夫(インクルージョン)が重要である。
・目の前の個人(外国籍人材)と向き合い、「仲間」として受けいれる上司や同僚の存在も必要ではないか。

●第2部 パネルディスカッション
パネリスト

正木郁太郎 氏
稲垣隆司

モデレータ
池照佳代 氏(株式会社アイズプラス 代表取締役、NPO法人キーパーソン21 理事、NPO IC〈インディペンデントコントラクター〉協会理事)

<ディスカッションポイント>
【異文化を受けいれるために「配慮」は必要か】

・「配慮」は度を超すと疎外感を感じさせる。「お客様扱い」にならないよう注意が必要。
・属性で決めつける「配慮」は不要。
・相手に合わせてコミュニケーションを変えていく「個人に対しての配慮」が必要。
・受けいれる側は、自分流を貫くだけではいけない。
・個人を理解し、向き合ったうえで「配慮」することが「インクルーシブ」なのではないか。

<Day2のポイント>
■外国人材が日本に「適応する」には“目的意識”が重要
■日本人が外国人材を「受容する」には“個人に向き合い「仲間」として受けいれる”ことが重要

Day3:日本人と外国人材がわかりあえる「多様化組織」の作り方とは


●パネルディスカッション
パネリスト

後藤裕幸 氏(株式会社グローバルトラストネットワークス 代表取締役社長)
矢野智之 氏(株式会社アイ・ビー・エス 代表取締役)
加藤征男 氏(株式会社ECC 総合研究所 外国人支援事業推進室 室長補佐)

モデレータ
稲垣隆司

<ディスカッションポイント>
【企業を多国籍にするメリットは

・ひとつの国の人材だけを採用すると「民族意識」が生まれる=「排他的」になる。
・多国籍の人材が一緒に働くことで「差別や偏見は恥ずかしい」という意識が生まれる。その意識が「気づきと変化」を生み出す。
・意識するべきは「日本人のグローバル化」ではない。「世界全体でグローバル化」することを考えなくてはならない。
・「理系人材」といった日本で枯渇している人材も海外には多い。

【外国人材のマネジメントのコツは】
・会社の文化に合う人を採用する。
・外国人材の文化的背景・コンテクストに即してマネジメントをする。
・言葉だけでなく、ダイアログ形式で体感させ、マインドセットをおこなう。
・漫画・イラストなどで視覚的な工夫をし、目指すゴールを具体的に見せる。
・お互いにリスペクトし合う。

【外国人材のマネジメントにおける教育と評価の工夫は】
・いかに定量化するかを心掛けている(コンピテンシー評価、360度評価、総選挙)。
・昇給案件もオープンにし、自ら手をあげさせる。

<Day3のポイント>
■これからの人材採用は「地球レベル」でおこなう
■日本人だけでなく外国人にもグローバル化が必要

Day4:さまざまな「企業文化」にどのように適応するか

●パネルディスカッション
パネリスト

佐藤邦彦 氏(リクルートワークス研究所 Works編集長)
吉田 崇 氏(イグナイトアイ株式会社 代表取締役社長)
稲垣隆司

モデレータ
寺澤康介 氏(ProFuture株式会社 代表取締役社長、HR総研 所長)

<ディスカッションポイント>
【企業文化に合う人材を採用することは最重要か】

・「カルチャーフィット」よりも、「ジョブフィット/スキルフィット」の方が現在の雇用形態に合っているのではないか。
・企業文化と合わない人材は、入社してもモチベーションが上がらないのではないか。
・阿吽の呼吸や、暗黙知を企業文化とするのではなく、行動指針・判断基準を明確にしておけば、多様な人材も適応できるのではないか。
・自社の企業文化を明示化・可視化するためには、データを用いた検証が必要。

【日本の転職率が高まることはよいことなのか】
・自分のポテンシャルを最も発揮できる場所を探し、日本・世界全体での適材適所を探すべき。
・「組織」にコミットするのではなく、「自分のキャリア」にコミットするべきなのではないか。
・企業側は、人材が所属する意味・意義を明らかにすると人材のフィット率も高まるのではないか
・2枚目の名刺を持つ(複数のコミュニティに属する)のも有効である。

【企業に入る人が適応することよりも、既存の社員の受容は大切か】
・既存の社員が、入社する人のパフォーマンスを上げさせるように工夫をするのが理想。しかし、現実としては入る側が「覚悟」や「目的意識を」持つことも必要。
・「自社にとっての受容」を考える。すべてを受けいれることが「善」というわけではない。
・企業と個人の関係性をフラットにし、個人に向き合うことが重要(1対1の対話)。

<Day4のポイント>
■文化を可視化する
■個に合わせた適材適所を探す
■自社らしい「受容の定義」を設定する

最後に

現在は、新型コロナウイルス感染症の影響や、「VUCAの時代(※2)」といわれるように、将来の予測が困難になっている状態である。そのような世の中で、以下の言葉が思い出される。

「この世に生き残る生き物は、最も力の強いものか。そうではない。最も頭のいいものか。そうでもない。それは、変化に対応できる生き物だ」

「進化論」を唱えたダーウィンの言葉だ。日本では、2020年3月から世の中の常識が一変した。この数ヵ月ほどこの言葉を痛切に感じた日々は、かつてなかったであろう。我々は「CQ(異文化適応力)」を鍵に、今の世の中に必要な一手を模索していきたいと思う。

※2「VUCA」:Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の4語それぞれの頭文字をとって作られた造語。

本コラムは、HRプロで連載中の当社記事を引用しています。
https://www.hrpro.co.jp/series_detail.php?t_no=2175

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