COLUMN
≪はじめに≫
「特定技能採用のポイント」をテーマに実施された、行政書士法人Climbと株式会社エイムソウルによる共同セミナーのレポートをお届けいたします。
本セミナーでは、行政書士で、就労ビザや、就労ビザを取った方のご家族のビザの申請をご専門とされている森川 敬太氏に、特定技能ビザについてお話しいただきました。
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労働市場データから、生産年齢人口は大幅に減少していくことが予想されます。
それに伴い外国人人材の増加が見込まれ、10年後には労働者の10人に1人は外国人になるといわれています。
つまり、皆さまのオフィスでも、今後10人に1人は外国人社員ということになり、社内で英語や中国語などが飛び交うような状況が非現実的ではなくなってきました。
INDEX
まずは外国人の方々がどういったビザで日本に在留しているか、どういったビザで働くことができるかについてご説明いただきました。
<外国人が日本で働く場合の4つのパターン>
パターンA
・永住者、その配偶者、定住者、日本人の配偶者のビザ。
・身分に対して与えられるビザを持っているため、就労制限は特にない。基本的になんでもできるオールラウンダー。
パターンB
・技術・人文知識・国際業務という名前のビザで、一般的に就労ビザと呼ばれるもの。高度外国人や高度人材と呼ばれることもある。他に特定技能ビザや企業内転勤ビザ、技能ビザなどがある。
パターンC
・家族滞在ビザ(例えば技術・人文知識・国際業務、高度人材のビザ保有者の配偶者や子供)や留学生ビザ。
・基本的に就労できない。ただ、資格外活動届けを出すことによって、週28時間まではアルバイトとして働くことが可能。
パターンD
・技能実習生やワーキングホリデー、難民ビザなど。
次に、雇用する際のビザについての注意点や不法就労についてお話いただきました。
<雇用契約を結ぶ前の確認事項>
在留カード(外国人のほとんどが持っている保険証のような身分証明書)を必ず確認する。
①就労可能なビザを今持っているか
②持っていない場合、就労可能なビザをとる条件を満たしているか
③仕事内容に合うビザを持っているか
④留学生や家族滞在ビザを持っている場合、資格外活動の許可を得ているか
<不法就労に対する処罰>
特に多いのが外国人に不法就労等をさせてしまうこと。その場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金と、かなり重い刑が設定されているため、十分に注意する。
特定技能ビザについて、まずはその誕生の背景からご説明いただきました。
特定技能ビザが始まった背景
■現在日本では人材不足が深刻な問題となっている。
有効求人倍率
特定技能ビザをとるための外国人の条件
■3つのパターンがあり、①が最も一般的なパターン。
次に、雇用側の義務について、入管への届け出義務と外国人支援の義務の、大きく2つに分けてご説明いただきました。
入管への届け出
これも大きく分けて2種類あり、何か事情が発生するたびに提出しなければならないものと、事情が発生していなくても四半期に1回提出しなければならないものがある。
①事情が発生した時に提出するものの例
②受け入れている特定技能外国人の数、その人たちの名前や生年月日などのリスト
届け出る事由が発生してから日14以内 | 四半期に1回-3月,6月,9月,12月の翌月14日以内 |
1. 特定技能雇用契約の変更 2. 特定技能雇用契約の終了 3. 新たな特定技能雇用契約の締結 4. 1号特定技能外国人支援計画の変更 5. 登録支援機関との支援全部委託契約の締結 6. 登録支援機関との支援全部委託契約の変更 7. 特定技能外国人の受入れ困難 8. 出入国又は労働に関する法令に関し不正 又は著しく不当な行為の発生 |
1. 受入れている特定技能外国人の数 2. 特定技能外国人の氏名、生年月日、性別、国籍・地域、住居地及び在留カード番号 3. 特定技能外国人が特定技能活動を行った日数、活動の場所及び従事した業務の内容 4. 派遣先機関の名称及び住所 5. 1号特定外国人支援計画の実施状況 6. 特定技能外国人及び同一の業務に従事する日本人に対する報酬の支払い状況 7. 所属する従業員の数、特定技能外国人と同一の業務に従事する者の新規雇用数、離職者数、行方不明者及びそれらの日本人か外国人かの別 8. 健康保険、厚生年金保険及び雇用保険の適用の状況 並びに労働者災害補償保険の手続き状況 9. 特定技能外国人の安全衛生に関する状況 10. 特定技能外国人の受入れに要した費用の額及びその内訳 |
✓これらを忘れたり、提出内容に間違いがあると、処罰の対象になるため十分注意する。
外国人への支援
特定技能ビザは、基本的に日本での生活にあまり慣れていない外国人を対象としているため、そういった外国人のために日本での生活の支援をする必要がある。
✓支援については、登録支援機関という機関がある。入管に登録を申し出ている機関で、一部または全部依頼することが可能。その場合、登録支援機関への顧問料のようなかたちで月々お金がかかるが、これだけの量の業務があるので、実は登録支援機関を利用したほうが人件費の面で安くなることも十分ある。一度検討すると良い。
次は特定技能ビザのポイント、現状についてのお話です。特定技能ビザは13種類ありますが、その中でも問い合わせが多いという業種について、多い順にご説明いただきました。
■外食業
■飲食料品製造業(食料品の工場で働く仕事)
■介護
■ビルクリーニング
■製造分野
■建設業
■宿泊業(ホテルや旅館)
■農業分野
続いて、特定技能ビザの試験と入管手続きの最新情報をお話しいただきました。
■試験の最新情報
4月1日から試験を受けられる人達の範囲が広くなる。今までは以下の人達は試験を受けられなかったが、これからは受けられるようになる。
1)中長期在留者でなく、かつ、過去に日本に中長期在留者として在留した経験がない人
例えば留学や就労ビザで過去に日本にいたことがない人が、観光ビザなどで日本に滞在して試験を受けるということが以前はできなかった。1回は日本に中長期在留した人達でないと日本での試験は受けられなかったが、これからは今まで日本に来たことがないような人でも、観光ビザで日本に来て、ついでに試験を受けることが可能になる。
2)退学・除籍留学生
日本に留学していた人達で、学校を退学してしまったり、除籍されてしまったりした人達は、せっかく留学したのに留学生としての本分を果たしていなかったということで試験を受けられなかったが、受けられるようになる。
3)失踪した技能実習生
技能実習生については、中には問題があるところがあり失踪してしまうことがあるが、そういう人達も試験を受けられるようになる。
4)「特定活動(難民申請)」の在留資格を有する人
今日本で難民申請をしている人。
5)技能実習等、当該活動を実施するに当たっての計画作成が求められる在留資格で現に在留中の人
ただし、試験が受けられるようになるというだけで、イコール、ビザが必ずとれるということではないので、注意しておきたい。
■試験範囲が広がった理由
→ 特定技能でビザを持っている、申請したという人が去年あまりにも少なかったのが原因と考えられる。
→ これらの理由から、外国人にとって特定技能があまり魅力的に感じられていないのでは?
入管手続きの最新情報
✓重要なのは、入管が何を求めているのかを正確に読み取ること。入管が求める資料は、一般に公表されている資料以外に、他の資料を出すよう言われることが多々あるので、そこを正確に読み取り提出できるかということ、多種にわたる資料をきちんと作成して準備できるか、この2つがポイントとなる。
最後に、行政書士に依頼する場合のビザ申請の流れをご説明いただきました。
①企業から行政書士に依頼
②行政書士が情報収集
・どういう外国人を採用したか
・どういう仕事を任せる予定か
③行政書士や弁護士では集められない書類収集・作成の指示
例)決算報告書や法定調書合計表など、その企業でないと取得が難しいような書類
オフィスの写真(就労ビザの場合、最近のトレンドとして求められることが多い)
外国人が働くデスクの配置図
④行政書士が申請書などの書類を作成
⑤書類への捺印・署名
⑥行政書士が入管に提出
⑦・許可の場合
既に日本にいる外国人 → 新しい在留カードを受け取ることができる。
今海外にいる外国人を呼ぶ → 認定証明書を行政書士が受け取る。それを各企業に送り、各企業から海外にいる外国人に郵送。その後各国にある日本大使館に行きビザをとり日本に来る。
・不許可の場合
入管に不許可になった理由を確認
→ 対策できそう、許可がとれる可能性が十分ある → 対策を検討し、再申請
→ 許可がとれる可能性がない → そのまま終了
最後に、技術・人文知識・国際業務、高度人材ビザで外国人労働者を雇う場合の注意点をご説明いただきました。
技術・人文知識・国際業務ビザは、自由に転職ができるビザである。ここが転職不可のビザとの大きな違いで、外国人にとって魅力ある会社を見つけると、本当にすぐに転職してしまう。早ければ1か月くらいで転職してしまうこともある。
→ 早期転職につながらないよう選考時にしっかりと見極め、外国人ならではの強みと弱みを活かせるような環境を整えてあげることが非常に重要である。
<早期転職を防ぐ方法>
外国人と日本人のどちらが優れているということではなく、ただ、違う部分が確かにあるので、そこをしっかり見極めないと入社後のミスマッチにつながる原因になってしまう。違いから目をそらすのではなく、外国人ならではの強みを把握してそれを伸ばしてあげたり、弱みを把握してそれを解消するための方法を考える方が建設的である。
✓このような状態にならないよう、外国人採用においては、そもそも異文化に適用しづらい人ではなく適応しやすい人を選考で見抜いたり、受け入れの研修などを実施し、適用できるようにフォローすることが非常に重要である。
特定技能ビザについては、まだ制度自体が未完成な部分が大きいため、これからどんどん変わっていくことが予想される。それに対応するため、今後しばらくは柔軟に対応していくことが大事である。