COLUMN

技能実習・特定技能の現場実例

6.セミナーレポート

はじめに
「技能実習・特定技能の現場実例」をテーマに実施された、株式会社岩井工機様と株式会社エイムソウルによる共同セミナー(主催:リフト株式会社)のレポートをお届けいたします。
昨今、増加傾向にある外国人材の採用・戦力化に関して、独自の方法で技能実習生の受け入れに成功している岩井工機様。同社の成功の秘訣を、エイムソウルが適性検査・組織診断を通して分析しました。
導き出された特徴を、現場の実感値を踏まえて解説します。

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松尾 伴尚 (株式会社岩井工機 製造部長2007年に地元高等学校を卒業後、2008年に株式会社岩井工機に入社。 “ものづくり”に興味があり、入社後はひたすら金属と向き合い汗を流す。現在は、製造部長として製造ラインの管理から採用及びマネジメント業務にまで携わっている。ベトナムでの技能実習生面接も担当。外国人材との向き合い方に悩みながらも最強の組織作りに奮闘中。
稲垣 隆司
(株式会社エイムソウル 代表取締役
同志社大学卒。急成長したベンチャー企業で人事部責任者を務め、 年間600名の新卒採用の仕組みを作る。2005年株式会社エイムソウルを設立し350社を超える顧客の人事課題解決に取り組む。2014年インドネシアに進出。日系企業に特化して人事課題解決に取り組む。現在、HRプロにて「日本流グローバル化への挑戦」を執筆中。
Global HR Magazineは、リフト株式会社が運営するオウンドメディア。少子高齢化による人口減少で人材確保が困難になった今日、グローバルな環境で企業が成長を続けていくためには、外国人材の活用は避けては通れない経営課題となっている。そのような時代背景を踏まえ、Global HR Magazineでは、外国人材雇用に関わる全ての企業様に役立つ情報を提供している。テーマは「ダイバーシティマネジメント」「在留資格手続き」「海外事情」etc.。”Diversity & Inclusionを実現する”というミッションのもと、外国人材に選ばれる魅力的な日本企業を増やし、日本社会における外国人材との“共生”・“協働”のモデルケースを一つでも多く作ることを目指している。

日本人の戸惑いと日本の特異性

まずはエイムソウルの稲垣より、日本人・外国人双方が感じる互いの特性への戸惑いについて解説しました。

日本人の戸惑いと日本の特異性
日本人が感じる外国人材への戸惑いについては、例えば以下のようなものがあります。

①ルールを守らない

②さぼって携帯ゲームをしている

③仕事とプライベートを分けられない

④雑談ばかりしている

⑤本音が分からない

⑥朝、時間通りに来ない

⑦担当外の仕事を嫌がる

⑧言われたとおりにやらない

⑨みんなが頑張っているのに先に帰る

⑩伝えているのに理解しない

一方で、世界62カ国における文化とリーダーシップの関係について調査分析を行った大規模プロジェクトである「GLOBE」の調査レポートによると、日本(日本人)の特異性として次のような特徴が指摘されています。

日本は“特殊な国”である
翻って外国人材側の視点からみると、上記のような日本人の特徴に違和感を覚えることもあり、日本人・外国人双方が互いに戸惑いを感じている事実が明らかになっています。

日本人側の視点
①ルールを守らない
②さぼって携帯ゲームをしている
③仕事とプライベートを分けられない
④雑談ばかりしている
⑤本音が分からない
⑥朝、時間通りに来ない
⑦担当外の仕事を嫌がる
⑧言われたとおりにやらない
⑨みんなが頑張っているのに先に帰る
⑩伝えているのに理解しない
外国人側の視点
①わけのわからないルールがある
②休むと怒られる
③人間的な距離感がある
④会社の雰囲気が暗い
⑤本音を聞いてくれない
⑥夕方、定時に帰れない
⑦担当外の仕事をやらされる
⑧効率よくやると叱られる
⑨みんなが仕事をしていると帰れない
⑩遠回しな言い方でわかりにくい

外国人材の適応力と「CQ」

次に、前頁にて掲げた日本人と外国人材との間に生じるギャップを解消するツールとして、「CQ」および「CQI」の活用法を紹介しました。

<日系企業で働く外国人のモチベーショングラフから分かること>
日系企業で働く外国人に、入国してから1年間のモチベーショングラフを書いてもらったところ、国籍に関係なく大半の方に見られる特徴がありました。それがU字曲線です。人が異文化に飛び込むと、最初は感情が上向きます(ハネムーン期)。しかし外国人の方が日本で生活をして働くというふうになると、必ずカルチャーショックを感じる時期が訪れます(カルチャーショック期)。そこからある程度で回復してきて(回復期)、安定する(安定期)のですが、先述の通り外国人にとって日本の文化は特殊であると映りますから、このギャップも大きいのです。

CQとは>
「CQ(Cultural Intelligence Quotient)」とは異文化適応の知能指数のことであり、「多様な文化が交わる環境で、効果的に対応できる能力」を指します。

上記のU字曲線は誰にでも訪れるものです。大事なのはその後の回復期にいかにスムーズに移行できるかということであり、弊社では「CQ」が高い人材=回復力が高い人材と位置付けています。外国人材の採用面接においては、「CQの高さ」と「カルチャー(所属する会社・組織)への適応度」の二点をしっかりと見極める必要があります。

岩井工機様における事例
~①CQIの結果から考察できること

ここからは、外国人材(技能実習生)の活用で成功を収めている岩井工機様の特徴を見ていきます。まずはじめに、岩井工機様にて実施いただいたCQI(外国人向け適性検査)の結果を元に、その成功の要因を分析しました。

CQIの実施にあたって>
岩井工機様では、約4年前から外国人実習制度の一環としてベトナム人の技能実習生を受け入れています。現在は6名の技能実習生が在籍しており、入国5年目の技能実習生3号生が2名、2年目および3年目の技能実習生2号生が4名、そして2021年に技能実習生1号生を新たに3名受け入れる予定となっています。

今回は既存の6名のベトナム人の方にCQIを受けていただきました。また同時にCQI-Ⅱという、受け入れ側の日本人社員の方に対する調査も実施しています。これらの調査の目的は、「ハイパフォーマーの特徴を分析すること」「採用選考基準の設定/見直しを図ること」「配属ミスマッチ・離職率の低減に繋げること」です。

CQIの結果から読み取れること①>
岩井工機様のCQIの結果を見てみると、以下のような特徴が有意に現れていました。

同社ベトナム人実習生の特徴

  • 「公私一体」を求める傾向が強い:同僚間の人間関係や付き合いが密な職場を好む気持ちが、一般的ベトナム人よりも高い
  • 「ピラミッド型組織」を好む傾向がやや強い:フラット型組織を好む傾向にある一般的ベトナム人よりも、指示系統が明確なピラミッド型の組織を好む傾向にある
  • 「チャレンジ志向」がやや高い:安全志向を求める一般的ベトナム人よりも、革新性や個人の裁量を重視する傾向が強い

(岩井工機様 CQIレポートより抜粋)

CQIの結果から読み取れること②>
岩井工機様のCQI-Ⅱの結果を見てみると、以下のような特徴が有意に現れていました。

同社日本人社員の特徴

  • 「自己主張」を好む傾向が強い:一般的な日本人よりも、はっきりと自己主張するコミュニケーションを好む
  • 「フラット型組織」を求める傾向が強い:一般的な日本人と比較すると、ピラミッド型組織であるよりも、上司・部下の関係性がフラットな組織であることを望んでいる
  • 「チャレンジ志向」が高い:一般的な日本人よりも、革新性や個人の裁量を重視する傾向が強い

(岩井工機様 CQIレポートより抜粋)

CQIの結果から読み取れること③>
次に、「行動特性」「性格特性」についても分析してみると、特に「性格特性」に関しては、同社のベトナム人実習生・日本人社員に共通する部分が多く、①慎重で職人気質な方が活躍しやすい風土である、②面接で性格がフィットする人材を採用しているという特徴が見られました。

また、「異文化への敬意」に関する分析については、ベトナム人実習生の持つ「異文化への敬意」の高さが特徴的でした。ここから言えることは、日本文化に対して敬意を払えるベトナム人を採用できていますが、人によっては異文化に敬意を払うあまり、過剰適応してしまうリスクもあるということです。過剰適応した場合、周囲に「自分が無い」「主体性が無い」という印象を与えることにもつながり、適応に困難を抱えている場合は支援が必要となります。

(岩井工機様 CQIレポートより抜粋)


CQIの結果から読み取れること④>
次に、CQIの重要なポイントとして挙げられる「モチベーション」について分析しました。その結果、同社のベトナム人実習生の場合、「目的意識」(=日本・日系企業で働く強い動機)となっているのは「キャリアアップ・スキルアップ」「私生活の充実」ということが分かりました。

(岩井工機様 CQIレポートより抜粋)

また、異文化の局面に対応したときにとる「異文化適応行動」の傾向については、「自律的学習」「目的志向」が高く、ネガティブ行動をとる傾向がある人は少数でした。友人・知人に頼ったり、対人的な支援を得て問題を乗り越えようとする行動はとりにくいため、職場でフォローが必要な可能性があります。

(岩井工機様 CQIレポートより抜粋)

これらのことから、成果を出したらきちんと認め、自報酬や生活の充実に繋がっていくことを実感してもらえるようなマネジメントをしていくと、よりポジティブに働いてもらえるのではないでしょうか。

CQIの結果から読み取れること⑤>
最後に、日本人社員の「受容意識」と「異文化受容行動」に関する分析を行いました。その結果、「受容意識」(=受容する必要性の理解)に関しては一般的な平均値よりも高く、会社が外国籍人材を採用することへの納得度は高いと考えられます。

(岩井工機様 CQIレポートより抜粋)

また、異文化の受容を促進するための適切な行動を取れるかどうかの指標である「異文化受容行動」については、業務遂行支援のサポートを意識する傾向にあり、特に“コミュニケーションの工夫”に取り組みやすいようです。一方で、受け入れ環境を整えてあげるという「環境適応支援行動」をとる割合が低いため、外国人実習生が人との関係性についての支援が必要な時には、日本人社員への意識づけが必要かもしれません。

(岩井工機様 CQIレポートより抜粋)

 

岩井工機様における事例
~②外国籍実習生受け入れにあたっての取り組み

ここからは、岩井工機様との対談の中で松尾部長よりお話いただいた、実際の社内での取り組み事例をご紹介します。

■外国籍実習生受け入れの実態

  • 現在の社員数は42名。平均年齢38歳で、若い世代が活躍している。
  • 外国人実習生の受け入れは2016年から実施。現在6名の実習生を受け入れており、全員ベトナム人。ベトナム人である理由は、日本人に近い感覚を持っていること。ベトナムは東南アジアの中でも日本企業が多く進出しており、また実際自分たちが現地へ行き彼らと触れ合ってみて、ベトナム人が自社に向いてるのではと考えた。
  • 当初は技能派遣による国際協力というのは名ばかりだと思っていたが、彼らの働きぶりや思想に触れ合うことによって、熱心な働きぶりに感化される日本人の社員も多くいた。またリフト株式会社発行のGlobal HR Magazineの記事を見て“素晴らしい会社だ”と評価をしてくださり、実際に工場見学や視察に訪れる外部の方々も増えた。

■日本人社員の反応

  • 社長から外国籍実習生受け入れの話があった際、ざわつきは非常に大きかった。一般社員の方々は興味はあるが実際どうやって関わっていいのか、指導員にあたる担当者は言葉の壁はどうやって超えたらいいのか、役職者の方々はまずどうやって管理をするのか等。いろいろな不安を抱えながらのスタートだった。
  • しかし実際に実習生と一緒に仕事をしコミュニケーションを取る中で、日本人だから/ベトナム人だからという意識はなくなり、今ではフォローというよりも仕事仲間という関係性に変わっていった。社長からも「日本人の若者と同じように接するんだ、決して甘やかさないんだ」という言葉があり、会社の方針を現場が理解して動いてくれた。

■コミュニケーションの面で工夫したこと

  • 日本語能力検定を持っている実習生が4名、持っていない実習生が2名。もちろんコミュニケーションの壁があったが、様々な工夫により乗り越えた。具体的には、社内のレクリエーションやプライベートの交流。そしてボランティアや地域貢献等を通して彼らと一緒に体験したということが大きい。地域の活動に積極的に参加したり、地域住民との挨拶をきちんと交わしたりした結果、今では地域に愛される存在になっている。
  • 先ほどのCQIの解説の中で「環境適応支援」と「業務遂行支援」の二点があったが、前者に関しては基本的に役職者がメインとして環境のフォローを行った。ただ趣味嗜好に関しては、一般社員も一緒になってフットサルや釣りを楽しんだりとフォローに取り組んだ。後者の業務遂行支援については、役職者、一般社員問わず全社員が実習生と向き合える環境が作れている。

■技術伝承の面で工夫したこと

  • 言葉の壁をがあったため、1日のスケジュールや注意事項をホワイトボード上で可視化することで、実習生が理解しやすくなるように工夫した。苦労した点は、職人用語や擬音をどう表現するかということ。全人協(全国人材支援事業協同組合)の通訳の方の協力も得ながら、足りないところをフォローしてもらった。また彼らとのコミュニケーションがうまくいかなければ、技術指導は全くもってできないことなので、まずは関係づくりを優先し、指導員一人ひとりが個々の実習生に向き合って手取り足取り教えるように心がけた。
  • 業務指導に関しては、彼らの意欲を損なわないために、比較的簡単な軽作業のほうを優先的に覚えてもらい、自信を付けてから本業である機械加工のほうを覚えてもらうように心がけた。
  • 上述のような取り組みを通して、疑問に思ったことを質問してもらえる関係が築けたことが、大きな成果だった。年齢が近い若手の日本人社員が多かったことも奏功した。

■外国籍実習生を採用する際の基準

  • 「バイタリティの高さ」が一つの基準。理由としては、社内の日本人社員に対して影響力をもたらすのではないか。そこから活力が生まれるのではないか。異文化を取り入れることによって今まで社内にはなかったアイデアが生まれるのではないかという考えが背景にあったため。
  • 実習後(帰国した際)に夢や目標があるかという点も重視している。目的がある方は、きちんと3年で技術を学ぼうとする意欲がある。
  • 現状の採用における課題としては、「計画が立てられないこと」が挙げられる。彼らが何年働くいてくれるのかという点について、当初の予定と変更が生じてしまう実習生もいる。本来技術指導を主体に行っていかなければならない中で、どうしても彼らの仕事ぶりが戦力となってしまっている以上、計画がなかなか立てづらい。

<ご参考>
Global HR Magazine内、岩井工機代表取締役社長のインタビュー記事⇒https://global-hr.lift-group.co.jp/44

 

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