COLUMN
はじめに
「技能実習・特定技能の現場実例」をテーマに実施された、株式会社岩井工機様と株式会社エイムソウルによる共同セミナー(主催:リフト株式会社)のレポートをお届けいたします。
昨今、増加傾向にある外国人材の採用・戦力化に関して、独自の方法で技能実習生の受け入れに成功している岩井工機様。同社の成功の秘訣を、エイムソウルが適性検査・組織診断を通して分析しました。
導き出された特徴を、現場の実感値を踏まえて解説します。
INDEX
まずはエイムソウルの稲垣より、日本人・外国人双方が感じる互いの特性への戸惑いについて解説しました。
日本人の戸惑いと日本の特異性
日本人が感じる外国人材への戸惑いについては、例えば以下のようなものがあります。
一方で、世界62カ国における文化とリーダーシップの関係について調査分析を行った大規模プロジェクトである「GLOBE」の調査レポートによると、日本(日本人)の特異性として次のような特徴が指摘されています。
日本は“特殊な国”である
翻って外国人材側の視点からみると、上記のような日本人の特徴に違和感を覚えることもあり、日本人・外国人双方が互いに戸惑いを感じている事実が明らかになっています。
次に、前頁にて掲げた日本人と外国人材との間に生じるギャップを解消するツールとして、「CQ」および「CQI」の活用法を紹介しました。
<日系企業で働く外国人のモチベーショングラフから分かること>
日系企業で働く外国人に、入国してから1年間のモチベーショングラフを書いてもらったところ、国籍に関係なく大半の方に見られる特徴がありました。それが「U字曲線」です。人が異文化に飛び込むと、最初は感情が上向きます(ハネムーン期)。しかし外国人の方が日本で生活をして働くというふうになると、必ずカルチャーショックを感じる時期が訪れます(カルチャーショック期)。そこからある程度で回復してきて(回復期)、安定する(安定期)のですが、先述の通り外国人にとって日本の文化は特殊であると映りますから、このギャップも大きいのです。
<CQとは>
「CQ(Cultural Intelligence Quotient)」とは異文化適応の知能指数のことであり、「多様な文化が交わる環境で、効果的に対応できる能力」を指します。
上記のU字曲線は誰にでも訪れるものです。大事なのはその後の回復期にいかにスムーズに移行できるかということであり、弊社では「CQ」が高い人材=回復力が高い人材と位置付けています。外国人材の採用面接においては、「CQの高さ」と「カルチャー(所属する会社・組織)への適応度」の二点をしっかりと見極める必要があります。
ここからは、外国人材(技能実習生)の活用で成功を収めている岩井工機様の特徴を見ていきます。まずはじめに、岩井工機様にて実施いただいたCQI(外国人向け適性検査)の結果を元に、その成功の要因を分析しました。
<CQIの実施にあたって>
岩井工機様では、約4年前から外国人実習制度の一環としてベトナム人の技能実習生を受け入れています。現在は6名の技能実習生が在籍しており、入国5年目の技能実習生3号生が2名、2年目および3年目の技能実習生2号生が4名、そして2021年に技能実習生1号生を新たに3名受け入れる予定となっています。
今回は既存の6名のベトナム人の方にCQIを受けていただきました。また同時にCQI-Ⅱという、受け入れ側の日本人社員の方に対する調査も実施しています。これらの調査の目的は、「ハイパフォーマーの特徴を分析すること」「採用選考基準の設定/見直しを図ること」「配属ミスマッチ・離職率の低減に繋げること」です。
<CQIの結果から読み取れること①>
岩井工機様のCQIの結果を見てみると、以下のような特徴が有意に現れていました。
同社ベトナム人実習生の特徴
(岩井工機様 CQIレポートより抜粋)
<CQIの結果から読み取れること②>
岩井工機様のCQI-Ⅱの結果を見てみると、以下のような特徴が有意に現れていました。
同社日本人社員の特徴
(岩井工機様 CQIレポートより抜粋)
<CQIの結果から読み取れること③>
次に、「行動特性」「性格特性」についても分析してみると、特に「性格特性」に関しては、同社のベトナム人実習生・日本人社員に共通する部分が多く、①慎重で職人気質な方が活躍しやすい風土である、②面接で性格がフィットする人材を採用しているという特徴が見られました。
また、「異文化への敬意」に関する分析については、ベトナム人実習生の持つ「異文化への敬意」の高さが特徴的でした。ここから言えることは、日本文化に対して敬意を払えるベトナム人を採用できていますが、人によっては異文化に敬意を払うあまり、過剰適応してしまうリスクもあるということです。過剰適応した場合、周囲に「自分が無い」「主体性が無い」という印象を与えることにもつながり、適応に困難を抱えている場合は支援が必要となります。

(岩井工機様 CQIレポートより抜粋)
<CQIの結果から読み取れること④>
次に、CQIの重要なポイントとして挙げられる「モチベーション」について分析しました。その結果、同社のベトナム人実習生の場合、「目的意識」(=日本・日系企業で働く強い動機)となっているのは「キャリアアップ・スキルアップ」「私生活の充実」ということが分かりました。

(岩井工機様 CQIレポートより抜粋)
また、異文化の局面に対応したときにとる「異文化適応行動」の傾向については、「自律的学習」「目的志向」が高く、ネガティブ行動をとる傾向がある人は少数でした。友人・知人に頼ったり、対人的な支援を得て問題を乗り越えようとする行動はとりにくいため、職場でフォローが必要な可能性があります。

(岩井工機様 CQIレポートより抜粋)
これらのことから、成果を出したらきちんと認め、自報酬や生活の充実に繋がっていくことを実感してもらえるようなマネジメントをしていくと、よりポジティブに働いてもらえるのではないでしょうか。
<CQIの結果から読み取れること⑤>
最後に、日本人社員の「受容意識」と「異文化受容行動」に関する分析を行いました。その結果、「受容意識」(=受容する必要性の理解)に関しては一般的な平均値よりも高く、会社が外国籍人材を採用することへの納得度は高いと考えられます。

(岩井工機様 CQIレポートより抜粋)
また、異文化の受容を促進するための適切な行動を取れるかどうかの指標である「異文化受容行動」については、業務遂行支援のサポートを意識する傾向にあり、特に“コミュニケーションの工夫”に取り組みやすいようです。一方で、受け入れ環境を整えてあげるという「環境適応支援行動」をとる割合が低いため、外国人実習生が人との関係性についての支援が必要な時には、日本人社員への意識づけが必要かもしれません。

(岩井工機様 CQIレポートより抜粋)
ここからは、岩井工機様との対談の中で松尾部長よりお話いただいた、実際の社内での取り組み事例をご紹介します。
■外国籍実習生受け入れの実態
■日本人社員の反応
■コミュニケーションの面で工夫したこと
■技術伝承の面で工夫したこと
■外国籍実習生を採用する際の基準
<ご参考>
Global HR Magazine内、岩井工機代表取締役社長のインタビュー記事⇒https://global-hr.lift-group.co.jp/44