COLUMN

2020.08.16

特定技能採用のポイントセミナー

3.セミナーレポート

はじめに
「特定技能採用のポイント」をテーマに実施された、行政書士法人Climbと株式会社エイムソウルによる共同セミナーのレポートをお届けいたします。
本セミナーでは、行政書士で、就労ビザや、就労ビザを取った方のご家族のビザの申請をご専門とされている森川 敬太氏に、特定技能ビザについてお話しいただきました。

森川 敬太
(行政書士法人Climb・行政書士、出入国在留管理庁申請取次者)
大学卒業後、地元香川県で中学校の常勤講師として勤務。その後、法律関係の事務所を経験後、2018年10月に行政書士法人Climbに入社。以後、就労ビザや身分系ビザの相談業務や申請業務に多く携わる。

労働市場データから、生産年齢人口は大幅に減少していくことが予想されます。
それに伴い外国人人材の増加が見込まれ、10年後には労働者の10人に1人は外国人になるといわれています。
つまり、皆さまのオフィスでも、今後10人に1人は外国人社員ということになり、社内で英語や中国語などが飛び交うような状況が非現実的ではなくなってきました。

就労ビザの基本

まずは外国人の方々がどういったビザで日本に在留しているか、どういったビザで働くことができるかについてご説明いただきました。

<外国人が日本で働く場合の4つのパターン>
パターンA
・永住者、その配偶者、定住者、日本人の配偶者のビザ。
・身分に対して与えられるビザを持っているため、就労制限は特にない。基本的になんでもできるオールラウンダー。

パターンB
・技術・人文知識・国際業務という名前のビザで、一般的に就労ビザと呼ばれるもの。高度外国人や高度人材と呼ばれることもある。他に特定技能ビザや企業内転勤ビザ、技能ビザなどがある。

パターンC
・家族滞在ビザ(例えば技術・人文知識・国際業務、高度人材のビザ保有者の配偶者や子供)や留学生ビザ。
・基本的に就労できない。ただ、資格外活動届けを出すことによって、週28時間まではアルバイトとして働くことが可能。

パターンD
・技能実習生やワーキングホリデー、難民ビザなど。

雇用時の注意点

次に、雇用する際のビザについての注意点や不法就労についてお話いただきました。

  • 家族滞在や留学生で資格外活動の届け出を出していない場合など、ビザがあっても就労できないということもある。
  • 就労できないビザを持っている外国人を採用してしまうと、不法就労させたということになり、たとえ法律や決まりを知らなくても処罰の対象になってしまうため、十分注意する。

<雇用契約を結ぶ前の確認事項>
在留カード(外国人のほとんどが持っている保険証のような身分証明書)を必ず確認する。
①就労可能なビザを今持っているか
②持っていない場合、就労可能なビザをとる条件を満たしているか
③仕事内容に合うビザを持っているか
④留学生や家族滞在ビザを持っている場合、資格外活動の許可を得ているか

<不法就労に対する処罰>
特に多いのが外国人に不法就労等をさせてしまうこと。その場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金と、かなり重い刑が設定されているため、十分に注意する。

 

特定技能ビザの概要

特定技能ビザについて、まずはその誕生の背景からご説明いただきました。

特定技能ビザが始まった背景
■現在日本では人材不足が深刻な問題となっている。

有効求人倍率

  • 事務職はそれほどではないが、生産工程やサービス業、建設建築関係などの有効求人倍率がかなり上がっている。去年人材不足により倒産した会社の数が歴代1位になってしまった事例もある。
  • 有効求人倍率が高いところの特徴として、今までの就労ビザでは認められない仕事ばかりである。その対策としてこの特定技能が始まったといわれている。具体的には、今まで就労ビザで認められていなかった飲食店での単純な接客作業や、工場などのライン工程の確認、工場での溶接作業などが、特定技能ビザで認められるようになった。

 

特定技能ビザをとるための外国人の条件
■3つのパターンがあり、①が最も一般的なパターン。

①業種ごとの試験を受ける 例)レストランで働きたい人 → 外食業の試験
食品製造業で働きたい人 → その食品製造業の試験
日本語に関する試験を受ける(右記のいずれか1つ)
・日本語能力検定4級以上(日本でも行なっている)

・JFT-Basic(日本では行なっていないが、海外では盛んに行われているものなので、海外にいる人を採用したい場合はこちらを勧めてみる)

②技能実習2号を修了している(技能実習の内容が、特定技能で働く仕事内容と関係あり)
③技能実習を修了している(技能実習の内容が、特定技能で働く仕事内容と関係なし)
業種ごとの試験を受ける

 

雇用側の義務

次に、雇用側の義務について、入管への届け出義務と外国人支援の義務の、大きく2つに分けてご説明いただきました。

入管への届け出

これも大きく分けて2種類あり、何か事情が発生するたびに提出しなければならないものと、事情が発生していなくても四半期に1回提出しなければならないものがある。

①事情が発生した時に提出するものの例

  • 特定技能雇用契約、新しい人が入ってきたり契約内容が変わった場合、または特定技能の人が辞めた場合など
  • 登録支援機関との契約の変更があったり、契約を新しく始めた場合など

②受け入れている特定技能外国人の数、その人たちの名前や生年月日などのリスト

届け出る事由が発生してから日14以内 四半期に1回-3月,6月,9月,12月の翌月14日以内
1. 特定技能雇用契約の変更

2. 特定技能雇用契約の終了

3. 新たな特定技能雇用契約の締結

4. 1号特定技能外国人支援計画の変更

5. 登録支援機関との支援全部委託契約の締結

6. 登録支援機関との支援全部委託契約の変更

7. 特定技能外国人の受入れ困難

8. 出入国又は労働に関する法令に関し不正 又は著しく不当な行為の発生

1. 受入れている特定技能外国人の数

2. 特定技能外国人の氏名、生年月日、性別、国籍・地域、住居地及び在留カード番号

3. 特定技能外国人が特定技能活動を行った日数、活動の場所及び従事した業務の内容

4. 派遣先機関の名称及び住所

5. 1号特定外国人支援計画の実施状況
→登録支援機関に全部の実施を依頼した時を除く

6. 特定技能外国人及び同一の業務に従事する日本人に対する報酬の支払い状況

7. 所属する従業員の数、特定技能外国人と同一の業務に従事する者の新規雇用数、離職者数、行方不明者及びそれらの日本人か外国人かの別

8. 健康保険、厚生年金保険及び雇用保険の適用の状況 並びに労働者災害補償保険の手続き状況

9. 特定技能外国人の安全衛生に関する状況

10.  特定技能外国人の受入れに要した費用の額及びその内訳

✓これらを忘れたり、提出内容に間違いがあると、処罰の対象になるため十分注意する。

 

外国人への支援

特定技能ビザは、基本的に日本での生活にあまり慣れていない外国人を対象としているため、そういった外国人のために日本での生活の支援をする必要がある。

1)入国前からガイダンスを行う
2)入国時また出国時の空港への送り迎え
3)外国人に対する契約の支援 例)アパートを借りる
銀行口座を作る
ないと生活が成り立たない携帯電話を契約する
4)入国後の情報提供 例)  日本で生活する上での一般知識(地域ごとのゴミ出しのルールなど)
日本の法令(日本での労働、雇用関係に関する法律など)
病院の場所。いざとなったら病院に連れて行ってあげる
5)日本語の勉強の支援
6)外国人の悩み相談
7)行政機関への手続き 例)住民票の登録
8)日本人との交流促進 例)お祭りがあった場合
9)企業側の都合で離職する場合、転職のサポート
10)外国人とその外国人を監督する人との面談を実施し、現状を把握する

✓支援については、登録支援機関という機関がある。入管に登録を申し出ている機関で、一部または全部依頼することが可能。その場合、登録支援機関への顧問料のようなかたちで月々お金がかかるが、これだけの量の業務があるので、実は登録支援機関を利用したほうが人件費の面で安くなることも十分ある。一度検討すると良い。

 

特定技能ビザの現状

次は特定技能ビザのポイント、現状についてのお話です。特定技能ビザは13種類ありますが、その中でも問い合わせが多いという業種について、多い順にご説明いただきました。

外食業

  • どういった仕事ができるのか → 調理や接客、店舗管理など、基本的になんでもできる。
  • これまでは……
    調理:技能ビザといって、プロのコックを雇うことしかできなかった。
    店舗管理:就労ビザでないとできなかった。さらになかなか許可が通らなかった。
    接客:どのビザでもできない仕事だったが、今回外食の特定技能ビザで働けるようになった。
  • 試験
    盛んに行われている。今日も一部で試験が行われ、3月上旬に結果が出る予定。受験者は4,500人程度で、合格率が大体6、7割。その分、特定技能に該当する外国人が増えると予想される。
  • 外食業だけの特徴
    技能実習生からの移行ができない。というのも、この外食業に該当する技能実習がないため、事実上試験からの移行しか考えられないビザであることに注意が必要。試験が盛んに行われているため、人材はかなりいると思われる。

 

飲食料品製造業(食料品の工場で働く仕事)

  • どういった仕事ができるのか → 工場内であればなんでもできる。ただし、酒類、お酒は除く。
  • 技能実習からの移行も可能。こちらも今現在試験が行われており、受験者数は2,220人ほどの予定。

 

介護

  • どういった仕事ができるのか → 基本的になんでもできる。
  • 試験
    フィリピンを中心に開催されており、日本国内ではあまり積極的に行われていないという印象。数自体は多いが受験者数はそれほど多くない。フィリピンで開催しているほうが合格率も高い。
    介護用語に関する日本語試験も別途あるため、試験を3つ受けなければならないというのが特徴。

 

■ビルクリーニング 

  • どういった仕事ができるのか → 建物内の清掃。
    建物の定義:共同住宅の専有部分ではないところ(例えばアパートやマンションの一室以外。廊下やエレベーターなど)。その他、普通にビルの内部の清掃。
  • 試験
    あまり積極的に行われていない。現在も合格者数はかなり少ない。

 

■製造分野  

  • どういった仕事ができるのか → 主にプラスチックや金属加工
    かなり数があり、それぞれ作業によって分かれる。
    逆に木材の加工はできない (木材については働けるビザは今のところない)。
  • 試験
    受験者数がかなり少なく、1回の試験で20人くらいしか受験できない。さらに合格後の合格証の発行にも5万円ほどかかるということで、現実的ではない。技能実習からの移行が現実的。

 

■建設業

  • どういった仕事ができるのか → 指導者の指示を受けながらの現場作業。
  • 試験
    あまり情報がなく、今年の2月にフィリピンで実施するという情報以外得られなかった。これも技能実習からの移行が現実的。

 

■宿泊業(ホテルや旅館)

  • どういった仕事ができるのか → 企画広報や接客、レストランサービスなど 。
  • これまでは……
    就労ビザで、外国人客に対するフロントでの案内といった業務はできたが、それ以外のレストランサービスなどが全くできなかった。企画広報であれば就労ビザでなんとかできる程度だった。今回、宿泊業の特定技能で新たにできるようになった。
  • 試験
    盛んに行われている。1月19日に合格発表があり、ここで412人が合格するため、この412人が新たな人材としてカウントできる。

 

農業分野  

  • どういった仕事ができるのか → 農地でやることであればなんでもできる。
    農地の中で肥料をやったり、搾乳をしたり、牛を育てたり、餌をあげたり。
    外に持って行き加工するとなると、それは待てということになる。
  • 試験
    一応フィリピン、カンボジア、インドネシアで実施はされているが、そこから引っ張って来るというのは現実的でない。技能実習からの移行が現実的。

 

特定技能ビザに関する最新情報

続いて、特定技能ビザの試験と入管手続きの最新情報をお話しいただきました。

■試験の最新情報

4月1日から試験を受けられる人達の範囲が広くなる。今までは以下の人達は試験を受けられなかったが、これからは受けられるようになる。

1)中長期在留者でなく、かつ、過去に日本に中長期在留者として在留した経験がない人

例えば留学や就労ビザで過去に日本にいたことがない人が、観光ビザなどで日本に滞在して試験を受けるということが以前はできなかった。1回は日本に中長期在留した人達でないと日本での試験は受けられなかったが、これからは今まで日本に来たことがないような人でも、観光ビザで日本に来て、ついでに試験を受けることが可能になる。

2)退学・除籍留学生

日本に留学していた人達で、学校を退学してしまったり、除籍されてしまったりした人達は、せっかく留学したのに留学生としての本分を果たしていなかったということで試験を受けられなかったが、受けられるようになる。

3)失踪した技能実習生

技能実習生については、中には問題があるところがあり失踪してしまうことがあるが、そういう人達も試験を受けられるようになる。

4)「特定活動(難民申請)」の在留資格を有する人

今日本で難民申請をしている人。

5)技能実習等、当該活動を実施するに当たっての計画作成が求められる在留資格で現に在留中の人

ただし、試験が受けられるようになるというだけで、イコール、ビザが必ずとれるということではないので、注意しておきたい。

 

試験範囲が広がった理由

特定技能でビザを持っている、申請したという人が去年あまりにも少なかったのが原因と考えられる。

  • 家族を呼べない。例えば結婚している人、子供がいる人がこの特定技能ビザをとっても、その妻や夫、子供を日本に呼ぶことができない。
  • 多くの外国人が、最終的な目標として永住申請、日本で永住権をとりたいと考えている。永住申請には10年日本にいなければならないという要件があるが、この特定技能で日本にいた年数は、その10年にカウントされない。
  • 情報がそもそも外国人に渡っていない。特定技能の試験を受けるような人達はかなり意識が高い。そういう人達にとっては、普通の就労ビザのほうが家族も呼べるし、最終的には永住申請もできるため、そちらのほうが魅力的に感じ、特定技能はあくまで滑り止め程度に考えている人が多い。

これらの理由から、外国人にとって特定技能があまり魅力的に感じられていないのでは?

 

入管手続きの最新情報

  • 特定技能ビザ
    → 条件を満たしていることを前提として、入管が求めてくる資料さえきちんと提出できれば通るビザという印象。
  • 他の就労ビザ
    → 入管の裁量の範囲がかなり広く、同じ仕事内容、同じ会社に就職した場合でも、許可になる人、不許可になる人がどうしても出てくる。

✓重要なのは、入管が何を求めているのかを正確に読み取ること。入管が求める資料は、一般に公表されている資料以外に、他の資料を出すよう言われることが多々あるので、そこを正確に読み取り提出できるかということ、多種にわたる資料をきちんと作成して準備できるか、この2つがポイントとなる。

 

ビザ申請の流れ

最後に、行政書士に依頼する場合のビザ申請の流れをご説明いただきました。

①企業から行政書士に依頼

②行政書士が情報収集

・どういう外国人を採用したか
・どういう仕事を任せる予定か

③行政書士や弁護士では集められない書類収集・作成の指示

例)決算報告書や法定調書合計表など、その企業でないと取得が難しいような書類
オフィスの写真(就労ビザの場合、最近のトレンドとして求められることが多い)
外国人が働くデスクの配置図

④行政書士が申請書などの書類を作成

⑤書類への捺印・署名

⑥行政書士が入管に提出

⑦・許可の場合

既に日本にいる外国人 → 新しい在留カードを受け取ることができる。
今海外にいる外国人を呼ぶ → 認定証明書を行政書士が受け取る。それを各企業に送り、各企業から海外にいる外国人に郵送。その後各国にある日本大使館に行きビザをとり日本に来る。

 ・不許可の場合

入管に不許可になった理由を確認
→ 対策できそう、許可がとれる可能性が十分ある → 対策を検討し、再申請
→ 許可がとれる可能性がない → そのまま終了

技術・人文知識・国際業務ビザでの採用における注意点

最後に、技術・人文知識・国際業務、高度人材ビザで外国人労働者を雇う場合の注意点をご説明いただきました。

技術・人文知識・国際業務ビザは、自由に転職ができるビザである。ここが転職不可のビザとの大きな違いで、外国人にとって魅力ある会社を見つけると、本当にすぐに転職してしまう。早ければ1か月くらいで転職してしまうこともある。

→ 早期転職につながらないよう選考時にしっかりと見極め、外国人ならではの強みと弱みを活かせるような環境を整えてあげることが非常に重要である。

<早期転職を防ぐ方法>

  • 母国から出て日本で働く外国人には、外国人ならではの強みと弱みがある。これらを選考でしっかり見極めていくことが大事である。
強み: 働く目的が明確
成長意欲が高い
働く覚悟がある
多言語に対応できる
弱み: 日本文化や企業文化に馴染めない
異文化適応力(カルチャーアダプテーション)が低い人がいる

外国人と日本人のどちらが優れているということではなく、ただ、違う部分が確かにあるので、そこをしっかり見極めないと入社後のミスマッチにつながる原因になってしまう。違いから目をそらすのではなく、外国人ならではの強みを把握してそれを伸ばしてあげたり、弱みを把握してそれを解消するための方法を考える方が建設的である。

  • 弱みである日本文化や企業文化との適応について注意する。

U字カーブという理論で、人は新しい環境に入ると初めは浮かれる。これをハネムーン期という。しかし、その後にはどうしてもカルチャーショックで気持ちが下がってしまう。その後、環境に適応した人は回復期を迎えそのまま安定期に入るが、適用できない人は回復できずに、結果、離職してしまったり、職場でも活躍できない状態になってしまう。

✓このような状態にならないよう、外国人採用においては、そもそも異文化に適用しづらい人ではなく適応しやすい人を選考で見抜いたり、受け入れの研修などを実施し、適用できるようにフォローすることが非常に重要である。

 

特定技能ビザについては、まだ制度自体が未完成な部分が大きいため、これからどんどん変わっていくことが予想される。それに対応するため、今後しばらくは柔軟に対応していくことが大事である。

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