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[HRプロ連載記事]第31話:調査レポートから見る、日本で働く外国籍人材の「離職」と「モチベーションダウン」(現状分析編)

8.連載記事

弊社株式会社エイムソウルは、ヒューマングローバルタレント株式会社とリフト株式会社と共同で、「日本で働く外国籍人材の離職とモチベーションダウンに関する調査」を実施しました。仮説として、日本で働く外国籍人材の「早期離職・早期モチベーション」が起こっており、その現状や課題をあきらかにすることで、外国籍人材の受容力はもっと底上げできるのではないかと考えました。結果、想定通りの実態と、その詳しい詳細が明らかになりました。10月・11月と2ヵ月続けて、この調査結果を私とCQI事業部の上崎主席研究員との対談形式でお届けします。10月の第一回は、「現状分析編」をお届けします。

早期離職の一番の原因は「上司のマネジメント・指導に対する不満」

稲垣:では、早速ですが調査の概要について教えてください。

上崎:はい。本調査は、 「日本で働く外国籍人材の離職とモチベーションダウンに関する調査」というテーマで、外国籍人材の離職とモチベーションダウンの実態を把握し、受け入れで工夫するべきポイントを明らかにする目的で実施しました。日本での在留・就労経験のある外国籍人材を対象に、2021年8月に調査をおこない、最終的に61ヵ国477名の回答を得ています。

稲垣:国籍や在留資格など、バランスよく様々な方々からの回答が取れていますね。今回はこの全体レポートの結果共有ですね。

上崎:はい。現在、「技人国」と「技能実習生・特定技能」に分けたレポートを作成しておりますが、今回は日本で働く外国籍人材の全体を捉えていきたいと思います。

稲垣:我々のCQI事業部では、「グローバル採用を科学する」というスローガンのもと、日本のグローバル化の課題となる異文化適応に関する定量的な研究を続けています。その研究の一環で、異文化適応できない外国籍人材、異文化受容できない日本人が一定数存在し、結果として、外国籍人材の「早期離職・早期モチベーションダウン」が起きているのでは、という仮説を立てていました。

上崎:はい。今回はその現状と原因を研究したわけですが、その仮説は正しかったと考えられます。まず、「日本で就労する中で、入社後1年以内の離職を経験したことがありますか」という問いに対して、約3割が「入社後一年以内に離職を経験している」という実態です。また、「離職したかったが、制度や契約にしばられてできなかった」と回答されている方が16%おり、これを合わせると実に44%という数字になります。さらに、「離職をした半数以上の早期離職は、入社半年未満で発生している」という結果も見逃せません。

稲垣:かなりインパクトのある数字ですね。その原因は何なのでしょうか。

上崎:早期離職の原因は、「上司のマネジメント・指導に対する不満」が最も多く、次いで「業務内容のミスマッチ」、「給料が安い、残業代が支払われない」、「職場の人間関係に対する不満」など原因は多岐に渡ることが分かっています。求職者も企業も、もちろん早期離職は望んでいません。ここは原因と向き合って改善を図っていきたいところです。

モチベーションダウンからの回復は、本人の「適応力」がカギ

稲垣:今回の調査では、「入社後1年以内に大幅に労働意欲が低下するモチベーションダウンを経験したことがあるか」という質問もしていますね。結果はどうですか?

上崎:はい。こちらも回答者の53%が「入社後1年以内にモチベーションダウンを経験」しており、なんと「入社後3ヵ月以内にモチベーションダウンが発生」したケースは約3割という結果でした。

稲垣:こちらも非常に高い割合ですね。モチベーションダウンの要因は何でしょうか。

上崎:「上司のマネジメントに対する不満」が49%と最多。「外国人に対しての差別・偏見がある」、「職場の人間関係に対する不満」、「業務内容のミスマッチ」がほぼ同じ割合で4割弱ですね。トップは、離職と同じ要因でした。ただ、「その後、モチベーションダウンの状況から、持ち直すことはできましたか?」という問いに対しては、モチベーションダウンの状況から、約半数の方が持ち直すことができています。

稲垣:私がよくセミナーなどで話すU字曲線(自分にとって異文化な環境に移ると、早期にモチベーションが下がり、一定の期間で持ち直す)が、多くの方に起こっていると思われますね。

上崎:モチベーションダウンから回復している方は半分以上いますが、回復できた理由を見ていくと興味深い結果になっています。1位が「自分なりに業務習得と職場に適応するための努力をした」、2位が「時間が経つ中で、仕事と職場に慣れて解消した」となっています。ということで、我々の研究テーマである「外国籍人材ご本人の適応力」がカギになっているのは間違いありません。一方、「職場で周囲の支援を得ることができている」のは“15~30%程度”と低く、ここは課題だと思われます。

稲垣:日本企業に就職した外国籍人材の早期離職と早期モチベーションダウンの実態がよくわかりました。では、この実態を受けてどのように日本企業は成長していけばいいのでしょうか。

※11月のコラムでは、「日本で働く外国籍人材の離職とモチベーションダウンに関する調査(課題解決編)」をお届けします。

【取材協力】
上崎 大輔
株式会社エイムソウル グローバル事業部研究員

上智大学(学士)、早稲田大学(修士)。2011年三井化学株式会社入社。人事部門にて、新卒採用・人材開発を担当。2016年にケンブリッジテクノロジーパートナーズに転職。大手製造業向けの業務・組織変革コンサルティングに従事。その後、旅行系ベンチャーで海外インバウンド事業の立ち上げに参画。海外1500社の旅行代理店への営業、受注案件の管理・実行を担当。2019年に退社/独立後、株式会社エイムソウル参画

本コラムは、HRプロで連載中の当社記事を引用しています。 https://www.hrpro.co.jp/series_detail.php?t_no=2583

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