COLUMN

レジデンストラック対応もこれで怖くない ~企業側が押さえるべきポイントと対策とは~

6.セミナーレポート

はじめに
「コロナ禍で求められるレジデンストラック(在日外国人の自宅待機)への対応方法」をテーマに実施された、株式会社グローバルトラストネットワークスと株式会社エイムソウルによる共同セミナーのレポートをお届けいたします。

本セミナーでは、グローバルトラストネットワークス社にて外国人雇用企業の受け入れサポートを行っている稲村 美穂氏に、レジデンストラックの現状と対策についてお話しいただきました。

稲村 美穂
(株式会社グローバルトラストネットワークス 営業本部Go-To事業部マネジャー)立教大学卒。2016年グローバルトラストネットワークス入社。外国人専門の家賃債務保証サービスを不動産会社に提案する営業部門を経て、Go-To事業部の立ち上げに携わる。現場で培った外国人の賃貸トラブル解決法などのノウハウを活かし、現部署にて外国人雇用企業の受け入れサポートを行っている。宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・総合旅行業務取扱管理者の資格を取得。

実務担当者目線で読み解くレジデンストラックとは

まずはコロナ禍で求められる来日外国人の自宅待機(レジデンストラック)に関する基本知識について、解説いただきました。

<レジデンストラックとは>
主に駐在員の派遣・交代等、長期滞在者用として設けられた、国際的な人の往来再開に向けた段階的措置のスキームのこと(外務省による定義を参照)。

国内で緊急事態宣言が発令された2020年4月、新型コロナウイルスの感染症の拡大防止のため、上陸拒否の対象国地域が設定され、その地域に滞在歴のある外国人は特段の理由がない限り入国できない状態でした。
そこで政府は国際的な人の往来を再開しようと、6月18日の決定により2国間の協議が整った一部の対象国・地域からは、従来の水際対策に加え、追加的な防疫措置を受け入れ企業が行うことを条件に、呼び寄せを可能としました。また9月25日の政府決定からは、一部の対象国地域に限らず、このレジデンストラックと同様の手続きを行うことで全世界からの呼び寄せが可能になっています。「誓約書」と呼ばれる書類を受け入れ側が作成し、防疫措置を確約している状態のもと、対象者がビザ申請を行うことで上陸が許可される。またその誓約書に沿って防疫措置を遵守しながら対象者が来日し、来日後14日待機を行いながら受け入れ企業、対象者ともに感染拡大防止に努める。そのスキームそのものがレジデンストラックです。

誓約書については、全部で15項目の事項があり、入国拒否対象地域の滞在歴の有無で必要な措置が異なります。
入国拒否非対象国の場合、出国前・入国時のPCR検査・入国後の健康フォローアップが不要となりますので、はじめに対象者の在住国が入国拒否の対象国かどうかを確認する必要があります。

誓約書の内容

<防疫事項実施の流れ
誓約書に記載の防疫事項の具体的な流れは、以下の通りです。受け入れ側の準備は来日前に行うことが圧倒的に多く、また受け入れ企業が行うべきこともあるため注意が必要です。

◆在留資格認定証明書(COE)交付後から待機終了までの流れ

受け入れ企業がすべきこと
まず受け入れ企業は誓約書を作成し、対象者にデータで共有をします。対象者は写しを2部準備し、現地の大使館などでビザ申請を行うことで、発給時に写しの1部を返却されます。こちらは入国の際に必要となりますので、日本に持参してもらいます。

続いて来日後の公共交通機関不使用と14日間待機を遵守するために、空港からの移動手段及び待機先の確保を行います。こちらについては対象者、受け入れ企業どちらが行っても構いません。

また出国の14日間前に健康モニタリングの実施ということで、受け入れ企業は対象者に毎日検温を行うように伝達をします。結果については、対象者が機内で渡される質問票の項目を通じて申告をすることになります。

さらに、受け入れ企業は出国の3日前にPCR検査を実施する必要があることを対象者に伝達します。入国時に検査証明が必要となります。

最後に健康フォローアップについて対象者に伝達をするといった流れです。

注意点
【健康フォローアップについて】
①誓約書にLINEアプリをインストールするスマートフォンの電話番号を記入するため、事前に決めておく必要がある。

②【受け入れ企業が行う場合】①の電話番号を質問票に記載するため、対象者に伝達しておく必要がある。

③①の電話番号のLINE上で、厚生労働省の友達登録を済ませておく。
※対象者が日本語でのやりとり可能&日本の電話番号のスマートフォンをお持ちであれば直接報告も可能。

④接触確認アプリCOCOAのインストール・位置情報の設定を対象者に促す。

⑤万が一陽性となってしまった際には、保健所の調査への協力が必要となり、位置情報の提供をする必要があることをあらかじめ対象者に同意を書面で得ておく。

【公共交通機関不使用について】
①ハイヤーを利用する場合、待ち合わせ時間についてはPCR検査の所要時間を加味して設定される。

②当日の状況について連絡をとり合いながら乗車するので、予約時に対象者との連絡手段が必要。(電話番号必須・メールOKなどハイヤー会社により異なる)

【一時待機先について】
①ホテルを予約する場合、レジデンストラックの待機先として利用したい旨を伝える必要がある。

②長期滞在の住まいとして契約する物件に待機する場合も、事前に管理会社・オーナーの承諾を得る必要がある。

③14日間待機開始は来日の翌日からカウントされるので16日目に開放となる。

④待機先の情報を質問票に記載するため、対象者に伝達しておく必要がある。

【保険加入について】
入国時に医療保険または健康保険に加入しておく必要がある。

 

◆来日から待機終了までの流れ
受け入れ企業がすべきこと
来日にあたっては対象者が対応することが大半です。受け入れ企業側が実施することは14日間待機中の健康フォローアップです。

注意点
【健康フォローアップについて】
①37.5℃以上の発熱をしているか否か、症状があるか否かを毎日確認する。

②体調に異変が生じた場合は一時待機先場所を管轄する帰国者・接触者相談センターに電話連絡し、指示を仰ぐ。

 

外国人側の目線で必要となるサポートとは

次に、外国人側の目線で必要となるサポートについて、具体的な事例を交えながら説明いただきました。

<レジデンストラックに関する外国人からの問い合わせ・要望の例
【事例①:電話番号の壁】
ある対象者は待機期間中は外出をなるべく控えるということで、Uber Eatsや出前館などのデリバリーサービスを頼みたかったのですが、日本の携帯電話番号がないことで会員登録ができず断念したそうです。デリバリーに限らず、携帯電話番号は生活の必需品としてすぐに取得したいというニーズは強いです。しかし原則携帯電話の契約というのは住所登録後に可能になりますので、ここに壁が生じます。

弊社でもGTN MOBILEという通信サービスを提供しておりますが、待機中に利用したいというニーズに応えられるように住所登録前でも特別に契約ができるスキームを設けました。弊社のようにレジデンストラックを考慮してくれる通信サービスを紹介してあげることをお勧めいたします。

【事例②:文化の壁】
待機中にネット通販を利用したところ、想像していたものと違うものが届いて不便を感じたという声がありました。日本語、つまり外来語での表現と母国の表現が違ったのでしょうか。文化が違うことで、買い物するにも一苦労という例はよくあるようです。待機中の生活相談にも応じられる環境を受け入れ側が用意してあげられると、外国人としてもとてもありがたいのではないかと思います。

【事例③:食事について】
ある対象者から、ハラルフードを用意してほしいというリクエストがありました。ハラルとはイスラム教において許されているものを言いますが、このように宗教によって食べることを禁じられているものがありますので、食事の内容についても配慮が必要となってきます。最近では様々な国から日本にいらっしゃっていますので、文化慣習については受け入れ側も積極的に興味を持ち、対応していく必要が出てきていると思われます。このようなケースでは、対象者の希望に合わせて手配または入手可能なデリバリーを調べるなど、可能な限り対応していただくことが望ましいでしょう。

【事例④:メンタル面】
14日間待機中の時間の使い方について、やはり時間を持て余してしまうという方が多いそうです。何もすることもないし、話し相手もいないので寂しいという声を聞きました。この場合、会社から課題を提示してあげたり、リモート研修やWeb面談を行ったりすることを検討いただくとよいと思われます。なるべく接点を設けてあげるようにしましょう。

 

受け入れで最も重要な住宅探しのスケジュールはどう影響するか

最後に、受け入れで最も重要な住宅探しのスケジュールはどう影響するかにについて、解説いただきました。

<長期的な住まいを14日間待機に使用する場合
従来の契約手続きとスケジュールの変更はありません。契約開始前の14日前を目安に申し込みをするスケジュールとなり、物件検索はさらに2週間前に開始すれば余裕をもって探すことができるでしょう。

しかし、コロナウイルスの影響を受け、不動産会社の申し込み時の対応に若干の変化が出てきています。特に対象者個人との契約を行う場合に、従来OKとしていた来日前の申し込みをNGとしたり、申込はOKでも待機先利用はNGとしたりと、不動産会社により対応が様々です。

よって来日前に契約可能、かつ14日間待機可能な物件から選択する必要がありますので、少し選択肢が狭まる可能性が出てきます。また注意点として、万が一対象者の来日が延期となってしまっても、契約が開始していた場合賃料を支払わなければなりません。来日が中止となってしまった場合も解約の扱いとなり、契約内容に沿って費用が発生することに注意が必要です。

14日間待機はホテル等で行う場合>
こちらは変更があります。契約開始の14日前を目安に申し込みをすることには変わりがないため、待機期間を加味して後ろ倒しする必要が出てきます。内見をしない、またはオンライン内見で物件を決定する場合は、待機終了後に契約手続きを行えるよう、待機期間中に物件決定から審査までを終わらせておきます。

契約から鍵の受け渡しまでは一定の時間が必要となりますので、一時滞在先は4日から5日ぐらい延泊するとよいでしょう。内見をしたい場合は待機終了後からのスタートになりますので、一時滞在先は2、3週間延泊する必要があります。

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