COLUMN

外国人材採用 就労ビザの基本ポイントセミナー

6.セミナーレポート
外国人材採用 就労ビザの基本

はじめに
「高度外国人採用のポイント」をテーマに実施された、行政書士法人Climbと株式会社エイムソウルによる共同セミナーのレポートをお届けいたします。
本セミナーでは、行政書士で、就労関係のビザや、就労ビザを持っている方のご家族のビザ取得をご専門とされている森川 敬太氏に、技術・人文知識・国際業務ビザについてお話しいただきました。

森川 敬太 (行政書士法人Climb・行政書士、出入国在留管理庁申請取次者)
大学卒業後、地元香川県で中学校の常勤講師として勤務。その後、法律関係の事務所を経験後、2018年10月に行政書士法人Climbに入社。以後、就労ビザや身分系ビザの相談業務や申請業務に多く携わる。
労働市場データから、生産年齢人口は大幅に減少していくことが予想されます。
それに伴い外国人人材の増加が見込まれ、10年後には労働者の10人に1人は外国人になるといわれています。
つまり、皆さまのオフィスでも、今後10人に1人は外国人社員ということになり、社内で英語や中国語などが飛び交うような状況が非現実的ではなくなってきました。

【関連の動画セミナー(下記画像をクリック)】

就労ビザの基本

まずは外国人の方々がどういったビザで日本に在留しているか、どういったビザで働くことができるかについてご説明いただきました。

<外国人が日本で働く場合の4つのパターン>
パターンA
・永住者、その配偶者、定住者、日本人の配偶者のビザ。
・身分に対して与えられるビザを持っているため、就労制限は特にない。基本的になんでもできるオールラウンダー。

パターンB
・技術・人文知識・国際業務という名前のビザで、一般的に就労ビザと呼ばれるもの。高度外国人や高度人材と呼ばれることもある。他に特定技能ビザや企業内転勤ビザ、技能ビザなどがある。

パターンC
・家族滞在ビザ(例えば技術・人文知識・国際業務、高度人材のビザ保有者の配偶者や子供)や留学生ビザ。
・基本的に就労できない。ただ、資格外活動届けを出すことによって、週28時間まではアルバイトとして働くことが可能。

パターンD
・技能実習生やワーキングホリデー、難民ビザなど。

雇用時の注意点

次に、雇用する際のビザについての注意点や不法就労についてお話いただきました。

  • 家族滞在や留学生で資格外活動の届け出を出していない場合など、ビザがあっても就労できないということもある。
  • 就労できないビザを持っている外国人を採用してしまうと、不法就労させたということになり、たとえ法律や決まりを知らなくても処罰の対象になってしまうため、十分注意する。

<雇用契約を結ぶ前の確認事項>
在留カード(外国人のほとんどが持っている保険証のような身分証明書)を必ず確認する。
①就労可能なビザを今持っているか
②持っていない場合、就労可能なビザをとる条件を満たしているか
③仕事内容に合うビザを持っているか
④留学生や家族滞在ビザを持っている場合、資格外活動の許可を得ているか

<不法就労に対する処罰>
特に多いのが外国人に不法就労等をさせてしまうこと。その場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金と、かなり重い刑が設定されているため、十分に注意する。

技術・人文知識・国際業務ビザの概要

正式名称「技術・人文知識・国際業務ビザ」についてのご説明です。
ビザ取得可能な職種の一例

    • エンジニア
    • 営業
    • サービス企画
    • 通訳・翻訳
    • マーケティング
    • 経理
    • 人事・総務

入管にもトレンドがあり、その時々によって通りやすい業務と、逆に通りにくい業務がある。エンジニアは比較的通りやすいが、最近は営業業務は通りにくくなっているという印象。それについては後述する。

■外国人の条件

1)学歴:以下の 2つのどちらかを満たす。
①日本もしくは外国の大学を卒業し、学士を得ている
②日本の専門学校を卒業している
注意事項:大学や専門学校で勉強した内容が仕事に活かせるかどうかというのも1つのポイントになってくる。大卒ではある程度融通が利くが、最終学歴が日本の専門学校卒業という場合、かなり合致していないと就労ビザをとるのが難しい。

2)学歴を持っていない場合は実務経験
日本で行う業務の実務経験を10年以上海外で積んでいる。


■従事できない仕事

一般的にブルーカラーと呼ばれる仕事は、この高度人材、技術・人文知識・国際業務、就労ビザでは許可されない。

例)工場でのライン工程、飲食店や小売店での単純な接客業、肉体労働
→ 入管では単純業務とみなされており、大学や専門学校で学んだ知識を活かせる仕事ではないということで、許可が出ることはない。

✓アルバイトでも行えるような業務かどうかが1つの判断基準となる。一般的にホワイトカラーと呼ばれる仕事は許可され、ブルーカラーと呼ばれる仕事では許可されないと考えてよい。

 

気を付けたいトラブル

次に、気をつけたいことということで、よく聞くトラブル事例を1つご紹介いただきました。

派遣会社から飲食店に外国人材を派遣しているという想定
(他の会社に従業員を出向させるような委託契約等がある場合も該当)

  • 派遣会社は、飲食店で会計担当として働く想定で外国人を派遣。
  • 入管にビザの届け出をするのも人材派遣会社であるため、入管には会計担当としてビザの申請をしていた。
  • しかし、実際飲食店ではこっそり単純な接客の仕事をさせていた。

 → 完全に不法就労ということになってしまい、飲食店だけではなく、人材派遣会社にもペナルティが課せられる。そのあと人材派遣会社が申請するビザがことごとく不許可になってしまった。

 → 入管に確認したところ、いわゆるブラックリストのようなものに派遣会社の名前が載ってしまい、よほどのことがないともう外国人の採用は認めないと言われてしまった。

✓人材を派遣する場合や外国人を派遣する場合など、委託契約を結んで外国人の社員を出向させるような場合は、派遣先、出向先でどういう仕事をしているのかを逐一チェックする必要がある。

 

入管の最近の傾向

次に、入管の最近の事情・考え方の傾向等について、具体例も取り上げながらご紹介いただきました。

業務内容に関する傾向

事例1)飲食店で会計の業務で直接雇用したいという事例

  • 飲食店に関しては、入管は現場作業を必ず疑ってくる。

実は接客をするのではないか、ホールやキッチンの担当になるのではないかなどの疑いをかけてくる。
→ 実際に、特定技能という去年の4月にできた新しいビザであれば、接客やホール、キッチンの仕事ができるため、そちらのビザを申請するように促してくる傾向がある。

事例2)清掃業の営業担当

  • 最近では、単なる営業では学術的素養が不要、要するに大学や専門学校で学ぶ知識が要らないのではないかと判断される傾向にある。

→ その採用する外国人の国の言語を利用する必要があるなどの事情があれば許可される傾向にある。例えばルート営業の担当になり、その営業先の担当者がまた外国人で、その外国人と円滑なコミュニケーション、やり取りをさせるために新しい外国人スタッフを雇ったといって申請すれば許可の見込みがある。

ポイント
✓いかに現場作業をしないと見せるか。
✓行う業務が非常に難しい業務で、大学や専門学校で勉強した専門的な知識が必要だというのをいかに見せるか。

審査期間の傾向

  • まだ何もビザを持っていない状態の外国人を、新しくビザをとって日本に呼ぶ場合 → 3か月
  • 日本にいる外国人を雇う場合 → 1か月

例)既に留学ビザを持って日本に留学している外国人のビザを、就労ビザや高度人材ビザに変更する場合
→ これらは入管が言っている時間で、前後することがよくある。

例1)その外国人の学歴や、雇う側の会社の規模に影響される傾向がある。
日本の大学を卒業している人、外国の大学を卒業している人、大学を出ておらず日本の専門学校のみ卒業している人の順に時間がかかる傾向にある。前後1か月くらいかかることもある。

例2)入管の混み具合によってもかなり影響される。
特に去年の4月頃からかなり時間がかかっている。なかには半年くらいかかってしまう例もあった。今はそこまでではなく、外国にいる外国人を呼ぶ場合で4か月くらい、日本にいる外国人のビザの変更で、長くて2か月くらい。

ポイント
✓審査期間を考慮して採用計画を立てることが重要である。

入管に提出する書類
何を提出するかというのは基本的に決まっているが、申請書を出したあと、追加で他の書類を要求されることがあり、最近それが多くなったという印象がある。さらに、申請書を出した1か月後くらいに今更のような感じで要求されることがあり、その場合審査期間が延びてしまうことになる。

<追加で要求される書類の例>

  • 企業の従業員リスト

そもそも外国人を雇う必要があるのかを判断するために求められる。従業員がたくさんいる場合は、わざわざ外国人を雇う必要はないのではないかと思われ、その判断のために要求されることが多い。

  • 外国人が働くオフィスの写真とオフィスのデスクの配置図

外国人が本当に申請書通りの仕事をするのかを見られる。例えば外国人の席が設定されていない、パソコンが用意されていないとなると、現場作業、飲食店であればホールやキッチンの仕事をするのではないかなどの疑いをかけられる場合がある。

  • 外国人の課税証明書、納税証明書

学生時代にオーバーワークをしているのではないかというような疑いをかけられている場合。オーバーワークとは、週28時間を超えて留学生が働く、家族滞在ビザの外国人が働くなど、規定以上の時間を働いてしまうこと。課税証明書、納税証明書の収入を見て、明らかに収入が大きい、オーバーワークしているだろう、ということで疑いをかけられる。

ポイント
✓あらかじめこれらを準備し、最初に提出することで、審査期間自体を短縮していくことが重要である。

ビザを専門に扱う行政書士であれば、あらかじめこれらを企業に準備してもらうことが多い。ただ、外国人の納税証明書、課税証明書については、外国人にとって不利な状況が書かれてることもあるため、あまり最初から出すことを提案はしない。

✓追加書類を求められた場合、入管が何を考えているのかを把握することが大事である。

追加資料を出せば審査を通すというニュアンスで書いてる時もあれば、逆に納税証明書、課税証明書の提出を求める場合は、ほぼオーバーワークがばれているということで、これは落とす気だと感じ取れることもある。※ここまで来ると、ビザの専門家に対する情報提供のような感じになり、行政書士や弁護士に依頼する方にはあまり関係ないが、念のため周知した。

ビザ申請の流れ

最後に、行政書士に依頼する場合のビザ申請の流れをご説明いただきました。

①企業から行政書士に依頼

②行政書士が情報収集

・どういう外国人を採用したか
・どういう仕事を任せる予定か

③行政書士や弁護士では集められない書類収集・作成の指示

例)決算報告書や法定調書合計表など、その企業でないと取得が難しいような書類
オフィスの写真(就労ビザの場合、最近のトレンドとして求められることが多い)
外国人が働くデスクの配置図

④行政書士が申請書などの書類を作成

⑤書類への捺印・署名

⑥行政書士が入管に提出

⑦・許可の場合

既に日本にいる外国人 → 新しい在留カードを受け取ることができる。
今海外にいる外国人を呼ぶ → 認定証明書を行政書士が受け取る。それを各企業に送り、各企業から海外にいる外国人に郵送。その後各国にある日本大使館に行きビザをとり日本に来る。

 ・不許可の場合

入管に不許可になった理由を確認
→ 対策できそう、許可がとれる可能性が十分ある → 対策を検討し、再申請
→ 許可がとれる可能性がない → そのまま終了

技術・人文知識・国際業務ビザでの採用における注意点

最後に、技術・人文知識・国際業務、高度人材ビザで外国人労働者を雇う場合の注意点をご説明いただきました。

技術・人文知識・国際業務ビザは、自由に転職ができるビザである。ここが転職不可のビザとの大きな違いで、外国人にとって魅力ある会社を見つけると、本当にすぐに転職してしまう。早ければ1か月くらいで転職してしまうこともある。

→ 早期転職につながらないよう選考時にしっかりと見極め、外国人ならではの強みと弱みを活かせるような環境を整えてあげることが非常に重要である。

<早期転職を防ぐ方法>

  • 母国から出て日本で働く外国人には、外国人ならではの強みと弱みがある。これらを選考でしっかり見極めていくことが大事である。
強み: 働く目的が明確
成長意欲が高い
働く覚悟がある
多言語に対応できる
弱み: 日本文化や企業文化に馴染めない
異文化適応力(カルチャーアダプテーション)が低い人がいる

外国人と日本人のどちらが優れているということではなく、ただ、違う部分が確かにあるので、そこをしっかり見極めないと入社後のミスマッチにつながる原因になってしまう。違いから目をそらすのではなく、外国人ならではの強みを把握してそれを伸ばしてあげたり、弱みを把握してそれを解消するための方法を考える方が建設的である。

  • 弱みである日本文化や企業文化との適応について注意する。

U字カーブという理論で、人は新しい環境に入ると初めは浮かれる。これをハネムーン期という。しかし、その後にはどうしてもカルチャーショックで気持ちが下がってしまう。その後、環境に適応した人は回復期を迎えそのまま安定期に入るが、適用できない人は回復できずに、結果、離職してしまったり、職場でも活躍できない状態になってしまう。

✓このような状態にならないよう、外国人採用においては、そもそも異文化に適用しづらい人ではなく適応しやすい人を選考で見抜いたり、受け入れの研修などを実施し、適用できるようにフォローすることが非常に重要である。

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