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今日世界的に、企業の競争力を高めるためには、人材の多様性が不可欠であるという考えが浸透しています。日本でも多様な人材の能力をビジネスに結びつけるため、多くの企業がダイバーシティ&インクルージョンを推進しています。
そもそもインクルージョン(inclusion)とは、日本語訳をすると「包括、包摂」といった意味合いになります。一方で、インクルージョンの反対語はエクスクルージョン(exclusion)であり、「排除、隔離」といった意味を示します。すなわち、「インクルージョン」とは、「排除しないこと」「仲間はずれにしないこと」と捉えていただくと良いでしょう。
そして、ダイバーシティ&インクルージョンとは「組織の誰もが多様性を受容・尊重されていると感じ、最大限の能力を発揮することができ、その成果が企業の成果と結びついている状態」を指します。企業では、ダイバーシティ&インクルージョンを実現するために、様々な福利厚生や制度を整備していますが、実際に従業員が受け入れられている、尊重されていると感じる瞬間とは、制度を活用するときではなく、上司や同僚など共に働く人との関わりにおいてではないでしょうか。インクルーシブ・リーダーシップとは、組織の誰もが他者と働くなかにおいて、インクルーシブを体感し、また、自らも実践していくために欠かせない存在です。
インクルーシブ・リーダーシップとは、これまでのような絶対的な存在の上司が大勢の部下を引っ張っていくのではなく、メンバー一人ひとりのリーダーとしての資質を引き出しながら、皆で組織を引っ張っていくスタイルのリーダーシップ概念です。インクルーシブリーダーは、メンバーを公正に扱い、一人ひとりが自分の意見に価値を感じ、自信を持って他のメンバーと刺激し合うことができるようサポートします。そして、組織的および個人的なパフォーマンスを共有ビジョンに向けて推進するよう促します。
デロイトによると、インクルーシブ・リーダーシップには「コミットメント」「勇気(謙虚さ)」「バイアス(偏見)認識」「好奇心」「異文化適応能力」「コラボレーション」の6つの特性があります。
①目に見える コミットメント |
多様性への本気の取り組みを明言し、現状に疑問を投げかけ、他者に説明責任を課し、多様性と包摂を自分の優先課題としている。 |
②謙虚さ | 自分の能力に関して謙虚であり、過ちを認め、部下に貢献の余地をつくる。 |
③バイアスへの認識 | 個人には盲点があること、そしてシステムには欠陥があることを認識し、実力主義を徹底するために尽力している。 |
④他者への好奇心 | 他者にオープンな姿勢と強い好奇心を示し、人の言葉に是非を問わずに耳を傾け、共感を持って周囲の人を理解しようと努めている。 |
⑤文化的知性 | 他者の文化に配慮し、必要に応じて適応している。 |
⑥効果的なチームワーク | 部下に権限を持たせ、思考の多様性と心理的安全性に気を配り、チームの結束に重点を置いている。 |
(引用)インクルーシブ・リーダーシップが組織のパフォーマンスを高める:https://hbr.org/2019/03/why-inclusive-leaders-are-good-for-organizations-and-how-to-become-one)
インクルーシブリーダーシップには組織にとって多くのメリットがあります。まず、インクルーシブ・リーダーの存在自体がD&Iを推進していくという企業のメッセージとなり、従業員に対してD&I推進実現への本気の姿勢を示すことができます。また、従来型のリーダーシップの場合、リーダーが優れているほど、メンバーは言われたことだけやる指示待ち人間になってしまう可能性が高いですが、インクルーシブリーダーシップの元では、メンバー全員が組織を引っ張っていく意識を持つので、一人ひとりが責任感を持つようになります。そして、自分のことが理解されると感じることができる環境・自信を持って意見を言い合うことが保証されている環境のため、メンバーのモチベーションやエンゲージメントも向上します。さらにデロイトの調査によると、インクルーシブリーダーを擁するチームは、パフォーマンスが高いと報告する可能性が17%高く、質の高い意思決定を行っていると報告する可能性が20%高く、協調して行動していると報告する可能性が29%高くなっています。インクルーシブ・リーダーシップには従業員や組織に様々なメリットをもたらします。
(参照)デロイト 多様性と包摂の革命:8つの強力な真実 https://www2.deloitte.com/us/en/insights/deloitte-review/issue-22/diversity-and-inclusion-at-work-eight-powerful-truths.html)
人材の多様性を活かすためには、インクルーシブな文化は欠かせません。そしてインクルーシブな文化を形成するためには、一緒に働く人間がインクルーシブでなければなりません。なぜなら、人は他者からの視線や扱いから、自分が受け入れられている・尊重されているかどうか判断するからです。インクルーシブ・リーダーシップの存在は、従業員が組織のインクルーシブな文化を感じ、自信を持って能力を発揮することができるかどうかに直結しているのです。インクルーシブ・リーダーの育成は多様な人材を活かすための重要課題です。
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ダイバーシティ&インクルージョンとは(まとめ)