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グローバル化、IT技術の急速な変化、消費者の価値観の多様化、コロナウイルスの拡大等、変化が激しい時代において、企業が成長し続けるためには多様な人材の活用は欠かせません。現在日本では、多くの企業がダイバーシティ&インクルージョン(D&I)※を掲げ、「多様性を活かし、企業の価値を高めていく」ための取り組みを推進しています。
※インクルージョン(inclusion)とは:日本語で「包括、包摂」を意味する言葉であり、「排除、隔離」を表すエクスクルージョン(exclusion)の反意語。つまり、「インクルージョン」とは、「排除しないこと」「仲間はずれにしないこと」と捉えられる。
一方ダイバーシティ先進国の米国企業では今、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DEI)が推進されています。多様な人材が真に活躍するためには「インクルージョン(包括)」とともに「エクイティ(公平)」が重要であるという考えが主流になっているのです。その背景には、不利な立場のマイノリティに同じ機会を与えても、社会構造的な不平等は解決されないという認識が広まったことが挙げられます。例えば、人種や性別によって、同じ仕事をしても支払われる賃金や昇給・昇進の機会が違う環境では、従業員は多様性を尊重されていると感じることはできないでしょう。「一人ひとりが多様性を受け入れられ、認められていると感じ、持っている力を100%発揮して、ビジネスの価値につなげていく」ダイバーシティ&インクルージョンを実現するためには、前提として組織がエクイティ(公平)である必要があります。
DEIにおけるエクイティ(公平)とは、採用プロセス、昇進機会、社内の手続き、方針、リソースの配分等、組織でのあらゆる活動において、正当性と公正さを促進することです。
公平と平等は、混同されがちですが、異なる意味を持ち、異なる結果になることがあることを知っておく必要があります。
上の絵を見てください。
平等(EQUALITY)の絵では、身長の違う三人に、同じ踏み台を同じ数だけ用意しています。そのため、一番身長の低い子どもは野球の試合を見ることはできず、身長差も変わらないままです。つまり、平等(EQUALITY)は、個人差を考慮することなく、全員に同じ対応をすることを意味します。結果、不平等は解決されていません。同じ結果になるためには、スタート地点が同じ場合に限ります。
一方、公平(EQUITY)の絵では、全員が野球の試合を見るという目的を達成できるよう、それぞれの身長に見合った数だけ踏み台が用意されています。つまり公平(EQUITY)は、誰もが機会を得られるようにする、つまり得られる結果を平等にするということです。そのために、不利な状況にある人には、障壁となっているものを特定し排除したり、追加の支援や配慮をしたりする必要があります。
多様な人材に公平を担保するということは、すべての従業員のスタート地点が同じではないこと、ある人にとっては利点になることが別の人には障壁となることを理解し、その不均衡を是正し、対処することを保証することを意味します。
DEI先進国の米国の調査結果より5つのメリットを紹介します。
①経済的利益 |
McKinsey&Companyが実施した調査によると、民族的に多様な企業は、それぞれの国の業界の中央値を超える経済的利益を得る可能性が35%高いことがわかりました。性別の多様な企業は、それぞれの国内産業の中央値を15%上回る可能性があります。 |
②人材獲得 | Glassdoorによると、求職者の67%は、企業を評価し、求人を検討する際に、多様な労働力を重要な要素と見なしています。 |
③イノベーション と成長 |
ハーバードビジネスレビューは、多様な企業が新しい市場を獲得する可能性が70%高いことを発見しました。また、前年比で市場シェアの増加を報告する可能性が45%高くなっています。 |
④従業員の積極性 の向上 |
ミレニアル世代の83%は、組織がインクルーシブな職場文化を育んでいると信じているときに積極的に関与していると報告しています。彼らの組織がインクルーシブな文化を育てていない場合、その割合は60%に低下します。(ギャラップの調査によると、生産性の低下により、解雇された従業員のコストは年間最大3,500億ドルと評価されています。) |
⑤より良い意思決定 | Forbesが実施した調査によると、包括的であるチームは、最大87%の確率でより良い意思決定を行います。 |
(引用:https://www.qualtrics.com/experience-management/employee/dei/)
①トーン・アット・ザ・トップ
簡単に言うと、上級指導層はDEIを公式の優先事項として明示しなければなりません。CEOと経営陣は、真の目標を設定し、イニシアチブに資金を提供し、明確な説明責任を持ってプログラムを主導する管理者を任命しなければなりません。そして最高幹部は新しい期待を具体化することで約束を実行しなければなりません。
②カルチャーの変化を義務付ける
企業カルチャーや価値観を将来に向かって進化、発展させ、組織の目的と結び付ける必要があります。根拠を説明し、期待される行動や人的慣行(雇用や昇進を含む)を示すことで、変化を企業全体に向けて伝えます。ルールばかりを重視するのではなく、オープンで率直な会話が歓迎され、誰もが本来の自分でいられ、声を上げ、社内常識に疑問を投げかけることができる雰囲気を作り出すカルチャーを醸成します。これらの価値観と行動の採択を測定、認識するために、あらゆるレベルのすべての従業員の関与を促し、戦略を組み込んでください。
③ダイバーシティグループに耳を傾ける
従業員同士がつながり、共有し、組織カルチャーの変化に貢献するための安全な場所として、社内ダイバーシティグループを形成し、権限を与えてください。専門知識、ネットワーク、信頼性を有する、評判の高い外部コミュニティグループと提携することも可能です。次に、これらのグループに耳を傾け、DEI計画に参加してもらいます。
④データからより良い洞察を得る
DEIの課題の理解、対応に向けて、データと分析の活用を強化します。現在の雇用や市場環境の状勢、ニーズ、問題を把握するために、社内外の豊富な雇用データを収集、分析します。次に、D&I目標の達成に向けた詳細な実績と進捗状況を追跡します。
⑤職場プログラムを見直す
DEIの視点に立って、雇用から昇進、福利厚生やウェルネスサポートに至るまで、既存の職場プログラムの見直し、調整を行い、従業員中心の適切で新たな提供プログラムを導入します。多様なグループが直面する潜在的な問題や課題を認識し、対処できる実績管理プログラムを確保します。
組織に公平性が担保されてはじめて、従業員は組織に受け入れられていると感じ、能力を発揮することができます。しかし、それは簡単なことではありません。なぜなら、社会構造的な不平等は何世代も前から続く無意識の偏見に基づくものが多く、有利な立場にいる者がそれを公平ではないと気づくことは難しいからです。だからこそ、ダイバーシティ&インクルージョンを達成するために、「エクイティ」について真剣に考え、公平な組織作りに取り組んでいくべきです。
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ダイバーシティ&インクルージョンとは(まとめ)